あうとわ~ど・ばうんど

Comeback Sessions Vol. 1

久々に、ブートに手を出してしまった。「Comeback Sessions Vol. 1/Miles Davis」。全7曲32分。
マイルスの引退・復帰期間前後の音源を集めたもの。78年3月のラリー・コリエル菊地雅章らとのセッション、81年6月にヴィレッジヴァンガードのメル・ルイス楽団に飛び入りした時の録音が収録されている。「マイルス・デイヴィスの生涯」(シンコーミュージック刊、04年)から、該当部分の記述を引用する。

メンバーはキーボードに菊地雅章ジョージ・ピュリス、ラリー・コリエル、ドラマーのアル・フォスター、そしてフォスターが連れてきたベーシスト、T・M・スティーヴンスだった。エレナ・スタインバーグはラリーに、マイルスのトランペットを忘れないようにスタジオに持っていってくれと念を押したが、マイルスはオルガンしか弾かなかった。バンドがリハーサルだと思って曲を合わせている間、マイルスはアダージョのテンポを捨て、最初からアップテンポで弾き通した。2度ほど通して演奏したところで、マイルスはおしまいだと言った。ミュージシャン達が気付かないうち、すべては録音されていたのだ。(379頁)
6月のある晩、マイルスはふらりとヴィレッジヴァンガードを訪れると、メル・ルイス楽団に飛び入りで演奏したのだ。サックス奏者ボブ・ミンツァーによれば、マイルスはステージのトランペットセクションに座ると、ジョー・モンデロ、ジョン・マーシャル、アール・ガードナーとそれぞれのトランペッターの楽器を借り、20分間、ブルースを演奏したのだという。(389頁)

前者の音源は約20分間、6つのトラックが切られ、マイルスは指揮をしただけになっているが、もしかすると③で聴けるグギャーンというオルガンはマイルスなのかもしれない。音楽はエレクリットマイルスの延長上というか、「GET UP WITH IT」に入っていてもおかしくない感じのサウンドである。
後者は、これぞブートという音質の中、約10分間ためつすがめつするように「カリプソ・フレリモ(セント・トーマス?)」のメロディーを挟んだりしながら、まるで4、50年代のようなトランペットソロが聴ける(このころ既に、マイルスは過去を振り返っていた!?)。ちなみに最後にフェードアウトするテナーサックスソロはボブ・ミンツァーじゃないよね?


ところでこの時期、前述「マイルス・デイヴィスの生涯」によれば、79年7月にポール・バックマスターやマーカス・ミラー、バディ・ウィリアムス、オナジェ・アラン・ガムスらが集められマイルスが欠席したためバンドだけで録音されたもの、また、ピート・コージーやジョン・スタブルフィールドが呼ばれまたしてもマイルスが欠席したセッション(録音したかどうかは言及なし)、のちに「Man With the Horn」に結実することになる甥のヴィンス・ウィルバーンらと80年4月から繰り返された録音などがあるらしい。第2弾第3弾は、これらの音源が出てくるということだろうか?