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The Illinois Concert

Illinois Concert
月イチ・ドルフィー。「Illinois ConcertEric Dolphy」(blue note)。63年(99年リリース)、全7曲69分。Dolphy(bcl,fl,as)Herbie Hancock(p)Eddie Khan(b)J. C. Moses(ds)the University of Illinois Big Band。
忘れかけた頃に、思い出したように出るドルフィーの発掘音源。そんな中でこのアルバムは、近年最良の収穫ではなかったろうか。ドルフィー空白の62、3年を埋める演奏。ブッカー・リトルとの双頭クインテット以来久々のリーダーコンボ。ピアノはハービー・ハンコック(もっとも、「Left Alone」(stash)という半ブートもあったが)。注目を集める要素は揃っている。
まずは歴史のおさらいを。61年7月にリトルらとファイヴスポットで名演を残した後、ドルフィーはかねてより録音に付き合っていたコルトレーンのグループに参加する。欧州楽旅を経て翌1962年初頭に退団、半年間のフリーランス生活の後、秋に待望のレギュラーグループを結成することになる。初期メンバーはジャッキー・バイアード(p)リチャード・デイヴィス(b)J.C.モーゼス(ds)。やがてピアノはバイアードからハンコックに、ハンコックがマイルスグループに去った後はボビー・ハッチャーソンが去来、ベースはデイヴィスからエディ・カーンに(63年夏のダグラス・セッションに呼んだことから察するに、ドルフィーの希望はあくまでデイヴィスだったと思われる)に、またモーゼスのトラをエドガー・ベイトマンが務めることもあった。さらにエドガー・アーモールのトランペットが加わってクインテット編成となることもあり、当時10代の気鋭だったウディ・ショウが参加することもあった。
さ、本題。実に興味深い曲が並ぶ。1年後「Out to Lunch」で大輪を咲かせる②「Something Sweet Somthing Tender」(ここではテーマのみ)がある。「Last Date」の1年以上前の段階で④「South Street Exit」が演奏されている。夏に吹き込む⑤「Iron Man」がある。といった具合。だが、最も注目するべきは⑥「Red Planet(Miles' Mode)」だろう。この曲、最近の説では、作曲者はドルフィーという。本盤ではドルフィーの名がクレジットされ、ライナーノーツでもウラジミール・シモスコ(ドルフィーの伝記の著者)がそう書いている。また97年の「The Complete 1961 Village Vanguard Recordings」英文ライナーノーツでも『ほぼ確実に(almost certainly)ドルフィーが書いた』と記している(ただし神聖コルトレーン皇帝を侵さない配慮からか、アルバム上はコルトレーン作のままだし、日本盤ライナーは『おそらくは大部分をドルフィーが書いた』などと微妙な訳をしている。それともぼくの英語力の問題?)。
ベストは無伴奏バスクラソロ③「God Bless the Child」か。同種の演奏の中でも最良のヴァージョンではないか。また、ドルフィー作の(笑)⑥「Red Planet」もアルトの飛翔力が素晴らしい。最後に一言。国内盤ライナー、まるで本作録音時点で既にハンコックがマイルスグループに在団していたかのように、ぬけぬけと記述するな。