あうとわ~ど・ばうんど

Beyond the Wall

Beyond the WallBeyond the Wall/Kenny Garrett」(nonesuch)。全9曲77分。Garrett(as,p)Bobby Hutcherson(vib)Pharoah Sanders(ts)Mulgrew Miller(p)Robert Hurst, Ⅲ(b)Brian Blade(ds)Ruggerio Boccato(per)etc.
なんだかんだ言いながら、惰性で買い続けているケニー・ギャレットの最新作。ノンサッチ移籍第1弾。内容は、チャイニーズ風味を加えた中期コルトレーンサウンドという感じか(マッコイに捧げられているらしい)。
といったところで、ちょっと辛口に書く。これだけのメンツを集めていながら、ほとんど生かしきっていない。特にファラオの参加について。だいたい、今さらコルトレーンサウンドにファラオを乗っけてどうしようというのか。たぶんこういうサウンドなんだろうな、と思っていたら全くその通りで、予想を裏切らなかった(もちろん、悪い意味)。
例えば、タイトル曲②。疾走感たっぷりでそれなりにスリリングな演奏ではあるのだが、ただそれだけ。何の引っかかりも、破綻もない(そういう演奏が好きな人の方が多いかもしれないが)。曲ごとに、声明風の男声や民族風弦楽器を入れて響きに工夫はしているが、音楽自体は素通りしてしまう。
と、まあ、かつてのアイドルプレーヤーに対して辛辣なコメントが並んでしまったが(まあ、それだけ要求度が高いとも言える。ギャレットはサイドマンの時は、相手の音楽性などお構い無しに“化け物”ぶりを発揮することもあるのに、リーダー作ではこぢんまりしてしまうのが不満だ)、たまに魔が差して買ってしまう王道ジャズに比べると全然マシだけれど。
最後に、少しは褒めておこう。最終曲「May Peace Be Upon Them」。爽やかそうに始まっておいて、だんだん雰囲気が怪しくなってゆき、挙句に崩壊する。そうそう、これでいいのよ。ちなみにこの曲には、ファラオは参加していない。ほら、一人でちゃんとできるじゃないの(笑)