あうとわ~ど・ばうんど

Hot Rats

Frank Zappaは嫌いではない。なんでそんな煮え切らない言い方になるかといえば、自分個人としてはザッパを心の底から好きだといえるほど聴いていないからだ(本当はいいたい気持ちだけど)。
オフィシャル非オフィシャル含めて、うんざりするぐらい沢山アルバムの出ているザッパだが、今まで聴いたのはせいぜい10枚。しかも今手元にあるのはCDで5枚程度だ。その少ない枚数の中で一番面白いと思うのは、墓場から起き上がろうとしているクリスティーン・フルカのジャケットが不気味な「Hot Rats」だ。
1曲目「Peaches En Begalia」。オープニング、これから何か起きそうな感じ。2曲目「Willie the Pimp」、Captain Beefheartのヴォーカルとザッパのギターが気持ちよい。3曲目「Son of Mr. Green Genes」もザッパのギターがひたすら心地よい。いつまででも聴いていたくなる。とてもいい感じだ。
4曲目を割愛して、このアルバムのハイライト(と勝手に思っている)5曲目「The Gumbo Variations」。この『アクの少ない片山広明』みたいなテナーは誰だろう? でも悪くない。続くSugar Cane Harrisのヴァイオリンもイイ。ふと、渋さ知らズの片山広明→勝井祐二ソロリレーを連想してしまう。ということは、ザッパは加藤崇之か?内橋和久か?と考えているうちに、ザッパのソロが終わってしまった。6曲目「It Must Be A Camel」、この曲のブラスのメロディーを聴くと、ああ、Tipographica今堀恒雄)はそうとう影響を受けたんだろうなあ、などと思う。
「Hot Rats」パート2とも呼ぶべき「Waka/Jawaka」や、Michael Breckerが素晴らしいソロを繰り広げる「Zappa in New York」も、たまに聴くことがある。と書くと、やっぱり自分はロックを理解していない、ジャズに引き付けた聴き方しかできないのだなぁ、としみじみ思ってしまう。
ところで、ザッパとローランド・カークが共演したステージは、CDにはなっていないのだろうか?



余談だが、昨年復刻された「フランク・ザッパ自伝」は名著だと思う(最近、河出書房新社は「サン・ラー伝」(買ってないが)といい「ローランド・カーク伝」といい「渋さ知らズ」といい「憂鬱と官能を教えた学校」といい、音楽系書籍のいい仕事が多い)。ミュージシャンの自伝としては、マイルスの自伝と双璧をなすと思う。