あうとわ~ど・ばうんど

Convasations and Zetrons

Convasations

Eric Dolphy“空白の”63年のアルバムに「Convasations」(「Memorial Album」ともいうが、Prestige盤と混同しないように)がある。その2曲目、「Music Matador」が随分と珍妙で面白い。かわいらしげなテーマの後、ドルフィーもどきのアルトソロ、次がドルフィーもどきのフルート、そしてソプラノのおかしげなアドリブの後、満を持してドルフィーが「こうだ!」とばかりアナーキーバスクラソロを繰り出すのだ。ちなみに、最初の「もどき」はSonny Simmons、二番目の「もどき」はPrince Lasha、ソプラノはClifford Jordanである。(まったく関係ないが「人間もどき」を思い出した)
ところで、この曲に関して、Sonny Simmonsがこんなことを言っている。「ドルフィーは俺のヒーローさ!俺はプリンス・ラシャと一緒にいるとき『ミュージック・マタドール』って曲を作ったんだが、奴は作っちゃいない、俺が作ったんだ(レコードには奴の名前がクレジットされてるがね)。ドルフィーは俺の曲に愛着を持ってた。彼は俺のプレイが好きだったんだ、なぜなら俺のプレイに“Cry”を感じてたのさ。彼は俺を大いに尊敬してた。彼は言ったさ『君の曲が好きだ、一緒にレコードを作らないか』とね。そうして俺たちは素晴らしい仲間になった。一緒に練習して、俺は彼から学び、彼も俺から学んだ…」(Complete ESP Disk Recordingsライナーノーツより。英語が苦手なので誤訳があるかもしれないが、たぶんこんな感じ)

実際にドルフィーがシモンズからどんな影響を受けたか確かめるすべはないのだが、たしかに二人は音色といい、フレージングといい、けっこう似ているように思う。ただし、例えて言えばCharlie ParkerSonny Stittみたいな感じで、マイルスがパーカーを評した言葉を借りて個人的な感想を言えば「シモンズはドルフィーに一番近かったが、それもサウンドの話で、内容じゃない。今も昔も、ドルフィーみたいに吹けるやつはいない、絶対にな」ということになるのだけれど。

Zetrons

さて本題。1933年生まれというから今年72歳(ドルフィーの死んだ年齢のちょうど倍だ)になるシモンズの参加するThe Cosmosamaticsの新譜「Zetrons」を聴いてみた。シモンズの他はMichael Marcus(ts、cl)Masa Kamaguchi(b)Jay Rosen(ds)というツーホーンカルテット。全8曲。
3曲目のミンガスに捧げた「Mingus Mangus」。シモンズの後に飛び出すマーカスのテナーソロが熱い。4曲目、ドルフィーの名曲「Serene」。さすがにドルフィーに比べると(比べちゃかわいそうだが)切れ味が鈍いし、こう来るだろうなんて思っているとずっこけてしまうのだが、ドルフィーの曲なら任せろ、といったシモンズの気概がひしひしと感じられ、なかなかの好印象だ。6曲目「Harmonious Beautious」。美しい曲だ。ここに来てようやく、ドルフィーに似てるか似てないかはどうでもよくなった。7曲目「Dance of The Zetrons」、シモンズがEnglish hornに持ち替えて素晴らしいソロを繰り広げる。うーむ、こういう感じで全曲通してくれればよかったのに。