藤井郷子カルテット / ライブアットジャズルームコルテス
7月のライブ時に買い漏らしていたアルバム。
ライブ・アット・ジャズ・ルーム・コルテス (CSJ0005)
- アーティスト: 藤井郷子カルテット
- 出版社/メーカー: Cortez Sound/ボンバ・レコード
- 発売日: 2017/08/19
- メディア: CD
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昨年12月のライブ。いやあしかしこれは、なんというか、素晴らしいなあ、というしかない。太田氏の謎エキゾチシズムというか不思議ノスタルジーというか、中東のような中央アジアのような東欧のようなケルトのような南米のような、その実どこでもない国のエスニック風味がスパイスとなって、あるいは触媒となって、ここで展開される即興音楽のムードを支配している。そして太田氏のヴァイオリンや声表現はもちろん、藤井さんのピアノも、田村氏のトランペットも、井谷氏のドラムも、4人が合わさった空間も、それぞれハッとするほどに美しく、豊かだ。
本田珠也トリオ / セカンド カントリー
- アーティスト: 本田珠也,守谷美由貴,須川崇志
- 出版社/メーカー: ANTURTLE
- 発売日: 2017/08/23
- メディア: CD
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ken さんの記事を読んで購入した、のではなく、記事公開時点では既に注文済で、抱き合わせ商品の関係で最近届いた(記事をきっかけに購入したことにしても全く差し支えはないのだが、まあ正確を期して)。ライナーノートではリーダー自身が、彼のドラミングそのもののような熱い文章を書いているのだけれど、エルヴィン・ジョーンズのコードレスサックストリオを念頭に置きつつ、“日本独自の日本のジャズ”を追求した作品、ということのようで、本田氏のドラムは前述のエルヴィンのような粘り気と厚みに満ちていて、守谷さんのアルト(およびテナー)はライナーが指摘するような“栄ちゃん節”も聴かれるがむしろ師匠の土岐氏の節回しの影響が濃いような端正さと蛮性を発揮しており、須川氏のベースは夫婦の熱さにあてられることなく気持ちの良い音色でズンズン進んでいく。
ken さんは「1970年代の日本のジャズのアルバムのようだ」と感想を書いていたが、わたしはというと「中央線ジャズ決定盤101 (CDジャーナルムック―SUPER Disc SELECTION)」に載っているようなジャズ(ライナーノートが言う所の「蛇頭」)の薫りを感じた。そういえばわたしがこうしたジャズを聴き始めたのは90年代前半のことで、本田氏のプレイを初めて観たのもそのころだったと思うが、「ザ・北海道バンド」という高橋知己氏・元岡一英氏・米木康志氏ら北海道出身者を中心としたグループでその姿に接したのだった(本田氏は出身者ではないが、初代ドラマーが道産子の小山彰太氏であった以降は、故セシル・モンロー氏、本田氏となぜか非北海道出身者に交代し、それぞれ3枚のアルバムを残している)。
ここからは大変失礼な思い出話になってしまって申し訳ないのだが、この時のライブの打ち上げで若き本田氏が先輩方そっちのけで隣に座った女性と話し込んで別席に移り、やがて高橋氏らが本田氏の元に行って挨拶をして帰っていったのを見てから、プレイとは関係のない良くない印象を持っていて、新しい世紀に入ってしばらく経つまで本田氏のドラムの真価に気づかなかったのは恥ずかしい限りである。しかし今回のトリオアルバムを聴いて、本田氏が日本のジャズをしっかりと血肉にしていたこと(おそらく北海道バンドの経験も糧になっているのだろう)に今度は好感を持ったのだった。
参考動画
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梵人譚
坂田明さんの新作も、さらにもう1枚出ている。
- アーティスト: 梵人譚 - Bonjintan(坂田明、Giovanni Di Domenico、Jim O'Rourke、Tatsuhisa Yamamoto)
- 出版社/メーカー: ダフニア
- 発売日: 2017/09/13
- メディア: CD
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今年1月、新宿 PIT INN でのライブ。懐かしの「Dance」に始まり、ライブで耳にしたことがある気がするもののアルバム化はもしかしたら初かもしれない「農作業」、おなじみの「音戸の舟歌」を経て、「Lonely Woman」で締めくくる、選曲は鉄壁の布陣。坂田さんにはやっぱりこういう、独特のリズムを持った曲や胸を掻き毟らずにいられないような“歌”での、一気に沸点まで持っていくようなブロウがよく似合う。うーむ、やっぱりライブが観たくなってきてしまった(が、メンバーは違う・・)
参考動画(6月のライブから「Dance」)
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梅津和時 KIKI BAND / Amatsu-Kitsune
KIKI BAND の新作が出ている。
- アーティスト: 梅津和時KIKI BAND
- 出版社/メーカー: ZOTT RECORDS
- 発売日: 2017/09/10
- メディア: CD
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帯には「記念すべき10枚目」と書いてある。試しにCD棚を確かめてみたら、9枚そろっていた。皆勤賞である。そういえば、今はなきイーストワークスから出た初アルバムに快哉を叫んでから、気が付くと16年がたっていて、ドラマー交代があったにせよ、梅津さんのレギュラーバンドとしては DUB やシャクシャインを超える活動歴ということになるのではないか。新作はノリの良い曲やら情感に浸れる曲やらをいつものごとく愉しませてくれるのであって、新機軸は特にないもののさすがの至芸といったところ。なお現在、バンドは新譜発売記念の国内ツアー真っ最中(例によって北海道はハブられている)で、公式HPではベスト曲ファン投票が行われていて、ツアーファイナルの新宿 PIT INN で順位の高かった曲を演奏するそうだ。個人的には初期の曲が好きなので、もしそれらが演奏されるならぜひともアルバム化してほしいものであるが・・・
ティザー(ツアー予告)
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Dave Rempis - Lattice
デイヴ・レムピス初の無伴奏ソロCDを聴く。正式発売は10月だが、本人に注文したらすぐ届いた。
Dave Rempis - Lattice
(Aerophonic Records, 2017)
Dave Rempis(as, ts, bs)
今年春にライブ録音したソロシリーズから6曲を厳選したとの由。ふだんのアグレッシブな吹きっぷりとは一転して、ゆっくりとじっくりと、管の鳴りと響きにも非常に気を配った、やや意外な作品となっている。とくに冒頭曲、バリトンサックスで、サブトーンをふんだんに利かせて奏でられるビリー・ストレイホーンの「A Flower Is A Lovesome Thing」には虚を衝かれた。ライナーノーツでは彼自身が、コールマン・ホーキンス、エリック・ドルフィー、アンソニー・ブラクストン、スティーヴ・レイシー、ジョー・マクフィー、アブ・バース、マツ・グスタフソンの名を挙げてソロワークへの影響を語っている(各曲の端々に影を見て取ることは意外と簡単である)が、ヴァンダーマークの名がないのは意味深だ(?)。
参考動画(アルバムに取り上げられなかった4月25日の演奏)
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ARASHI - Trost Live Series 001
現在日本ツアー中(例によって北海道は無縁)の ARASHI の新作が出ている。
ARASHI - Trost Live Series 001
(TROST Records, 2017)
坂田明(as, cl, vo) Johan Berthling(b) Paal Nilssen-Love(ds)
今年5月のライブの録って出しだが、ジャケにはタイトル以外、メンバーも曲目も録音データも載っていないというそっけなさ。詳しくは bandcamp ページを参照せよ、ということなのか。もっとも、200枚限定で Amazon あたりではラインアップされていないようなので、もともとツアー物販用ということなのかもしれない。内容はいつも通りと言えばいつも通り、じっくりした展開と皆で全力疾走する展開とが交互にやってくる。いつ聴いても坂田さんのアルトの音はやっぱりいいなあ、とはいいながら、坂田さんがこのバンドではないがもうすぐ札幌に来る予定になっているのだけれど、いつになく料金が高いのと、他にいろいろ観たいライブが多いので、今回は見送る公算だったりする。
参考動画(CD録音5日後のライブ)
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PBB's Bread & Fox - Live @ Jazz Club Ferrara
PBB がライブアルバムをデジタルでリリースしている。
PBB's Bread & Fox - Live @ Jazz Club Ferrara(2017)
Piero Bittolo Bon(as, compositions) Filippo Vignato(tb) Glauco Benedetti(tuba) Alfonso Santimone(p) Andrea Grillini(ds)
昨年10月の録音。その前月にリリースされた「Big Hell On Air」の発売記念ライブだと思われるが、アルバムから9曲中7曲が選抜されている(最終曲はもちろんヘンリー・スレッギルの「Paper Toilet」だ!)。スタジオ録音だった前述作とはアンサンブルの一体感と緊密度は全く変わらぬながら、PBB のアルトソロは微妙に異なって、ライブならではの熱さと勢いが好ましく心地よい。ステージ上で簡易な機材で録音したような、やや粗い音像も雰囲気にとても合っている。
参考動画(ライブ録音時の映像)
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(ちなみに今年1月のライブでは新曲が披露されている)
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