あうとわ~ど・ばうんど

本田珠也トリオ / セカンド カントリー

セカンドカントリー

セカンドカントリー

本田珠也(ds) 守谷美由貴(as, ts) 須川崇志(b) 峰厚介(ts)


ken さんの記事を読んで購入した、のではなく、記事公開時点では既に注文済で、抱き合わせ商品の関係で最近届いた(記事をきっかけに購入したことにしても全く差し支えはないのだが、まあ正確を期して)。ライナーノートではリーダー自身が、彼のドラミングそのもののような熱い文章を書いているのだけれど、エルヴィン・ジョーンズのコードレスサックストリオを念頭に置きつつ、“日本独自の日本のジャズ”を追求した作品、ということのようで、本田氏のドラムは前述のエルヴィンのような粘り気と厚みに満ちていて、守谷さんのアルト(およびテナー)はライナーが指摘するような“栄ちゃん節”も聴かれるがむしろ師匠の土岐氏の節回しの影響が濃いような端正さと蛮性を発揮しており、須川氏のベースは夫婦の熱さにあてられることなく気持ちの良い音色でズンズン進んでいく。

ken さんは「1970年代の日本のジャズのアルバムのようだ」と感想を書いていたが、わたしはというと「中央線ジャズ決定盤101 (CDジャーナルムック―SUPER Disc SELECTION)」に載っているようなジャズ(ライナーノートが言う所の「蛇頭」)の薫りを感じた。そういえばわたしがこうしたジャズを聴き始めたのは90年代前半のことで、本田氏のプレイを初めて観たのもそのころだったと思うが、「ザ・北海道バンド」という高橋知己氏・元岡一英氏・米木康志氏ら北海道出身者を中心としたグループでその姿に接したのだった(本田氏は出身者ではないが、初代ドラマーが道産子の小山彰太氏であった以降は、故セシル・モンロー氏、本田氏となぜか非北海道出身者に交代し、それぞれ3枚のアルバムを残している)。

ここからは大変失礼な思い出話になってしまって申し訳ないのだが、この時のライブの打ち上げで若き本田氏が先輩方そっちのけで隣に座った女性と話し込んで別席に移り、やがて高橋氏らが本田氏の元に行って挨拶をして帰っていったのを見てから、プレイとは関係のない良くない印象を持っていて、新しい世紀に入ってしばらく経つまで本田氏のドラムの真価に気づかなかったのは恥ずかしい限りである。しかし今回のトリオアルバムを聴いて、本田氏が日本のジャズをしっかりと血肉にしていたこと(おそらく北海道バンドの経験も糧になっているのだろう)に今度は好感を持ったのだった。


参考動画
www.youtube.com