あうとわ~ど・ばうんど

Evans / Fernández / Gustafsson - A Quietness of Water

Not Two Records から、EFG Trio の新作が出ている。

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Evans / Fernández / Gustafsson - A Quietness of Water
Not Two Records, 2017)
Peter Evans(tp) Agustí Fernández(p) Mats Gustafsson(sax)


3人のヴァーチュオーソによる音楽は、それぞれの楽器の極限を追究した演奏となっているが、もっとも「極限」とひと口に言ったところで、激しいだけが極限とは限らない。細やかさの極限というものも当然ながらあるわけで、「A Quietness of Water(水の静寂)」というタイトルが示すように、この3人でまず想像する音とは異なったとても繊細な響き(まあ決して静かというわけではないけれど)に徹頭徹尾惹きこまれるのである。


アルバム録音と同時期の動画
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前作は14年3月9日参照

Rema Hasumi - Billows of Blue

蓮見令麻さんから新譜が届く。


Rema Hasumi - Billows of Blue
Ruweh Records, 2017)
Rema Hasumi(p, vo) Masa Kamaguchi(b) Randy Peterson(ds)


深い印象を残した前作「Utazata」から一転、非常にジャズ寄りな演奏、と聴こえた。とはいえ前作のように白地な日本的主題がない、というだけで、やっぱりとても〈日本人的〉に聴こえてしまうのは、私の数少ないピアノトリオ聴取体験によって菊地雅章を想起してしまうからなのであって、昨今の気持ち悪い自国賛美現象とは関係ないことは明記しておきたい(わざわざ曲解する人もいないだろうが)。ピアノによる研ぎ澄まされた演奏も滋味深いけれど、id:kanazawajazzdays さんが『在ったこともない記憶を辿るような感情を揺さぶる』と述べたヴォイスもとてもいい。こういう透明な声音で歌える人の音楽は、無条件で信用したくなる。

CELEBRATE ORNETTE (DVD編)

先日、休日を利用してオーネット・コールマンのDVDをようやく観遂せた。

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CELEBRATE ORNETTE
Song X Records, 2016)


コンサートには出演者のインタビュー、音楽葬には弔問者のコメントが挟まっているが、収録されている音楽はCDと同じ。なのではあるれど、映像で確認するとやはり少々印象が異なるから不思議で、奏者たちが実際にどのような様子だったか、を知れるのは大きいということだ。コンサートでオーネットが、周りの音を聴いてるんだか聴いてないんだか、超然と演奏にふける様子は、その音色と相まってさらに胸を締め付けられる。しかもオーネットが最後に延々と吹いていたのはブルースだった、のだから、なおさらだ(しかしその後もオーネットをステージ上に座らせたままプログラムが進行していく。のは、観ようによってはシュールな光景である)。音楽葬のほうでは、オーネットより1歳上のセシル・テイラーが見た目はさすがに老いたなあ、という感想を抱かせつつも、ピアノの前に座るとシャンとしてタッチも強靭なままだから素晴らしい。この人はどうやらまだまだ長生きしてくれそうである。(1月29日参照)

Pat Metheny / Ornette Coleman - Song X : 20th Anniversary

Celebrate Ornette」のDVDは未だ観ていないが、レーベル名が〈Song X Records〉になっていたので懐かしく、久しぶりに引っ張り出して聴いてみた。

Pat Metheny(g, guitar synth) Ornette Coleman(as, vln) Charlie Haden(b) Jack DeJohnette(ds) Denardo Coleman(ds, per)


パット・メセニーがゲフィン移籍第一弾としてオーネット・コールマンを迎えて85年に吹き込んだアルバムの20周年を記念して、05年にリリースされた完全版。これが出た当時は非常に驚いたし、追加の6曲が末尾でなく冒頭に収録されていることに驚き、しかもそれによってアルバムの印象までがらっと変わったことにも驚いたものだった(そして、それからさらに10年以上がたったことにも驚いている)。

とはいえ、この作品の精髄はやはりオリジナルアルバムのほうにあると思っていて、とくに13分に及ぶ「Endangered Species」では、オーネットがいつもの“のんき父さん”風をかなぐり捨てたように、サックス奏者としての凄みを存分に味わわせてくれるし、もしかするとこの演奏が「Spy Vs Spy」の発想の直接の源になったのではないかと思うのだ。


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Kristo Rodzevski - Bitter Almonds

メアリー・ハルヴァーソンが伴奏するヴォーカルアルバムの第2弾。実は、前作「Batania」(15年10月23日)は隠れ愛聴盤なのである。

Bitter Almonds

Bitter Almonds

Kristo Rodzevski(vo, acg) Mary Halvorson(elg) Taylor Ho Bynum(cor) Chris Speed(ts) Tomeka Reid(cello) Michael Blanco(b) Tomas Fujiwara(ds)


主役のヴォーカルの素性は相変わらずよく分からないが、素朴な味わいの歌はフォークというのかロックというのかジャズといえるのか、こちらも相変わらずよく分からないながら不思議な魅力があって、間奏で斬り込んでくるメアリーのエレクトリックギターがやっぱりスリリング。前作には参加していなかったクリス・スピードのテナーが滋味深い。(アルバム単位としては前作の方が好みだけれど)


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CP Unit - Before the Heat Death

続けてクリス・ピッツィオコスの新譜を聴く。

Before the Heat Death

Before the Heat Death

Chris Pitsiokos(as) Brandon Seabrook(elg) Tim Dahl(elb) Weasel Walter(ds)


もっとも、新譜と言っても、聴くのは初めてでない。このCDこそが昨年3月にピッツィオコスの bandcamp で数日販売されたっきり姿を消してしまったアルバムだったのだ(昨年3月9日12月31日参照)。ただし当時の推測とは違って、メンバーは「One Eye with a Microscope Attached」(8月29日)と同じでなく、上記面子が正しい。なるほど、よく聴けばこのドラムはウィーゼル以外ないよねー、などと相変わらずの馬鹿耳をさらけ出してしまっているのだが、馬鹿耳ゆえ何度聴いても新鮮な気分で楽しめるのだから幸せなものである(苦笑)。


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Gorilla Mask - Iron Lung

clean feed レーベルに直接注文していた新譜が届いている。まずは Peter Van Huffel 率いる Gorilla Mask を聴く。

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Gorilla Mask - Iron Lung
(clean feed, 2017)
Peter Van Huffel(as) Roland Fidezius(elb, effects) Rudi Fischerlehner(ds)


相変わらずのかっこよさ。前作「Bite My Blues」(14年6月17日)と基本路線は変わらぬながら、コンポジションの緻密さ・複雑さは増していて、グループ名の頭に付いていた「Peter Van Huffel's」が取れていることからも3者の緊密度が深まった印象を受ける。とはいえ、やはり私の耳はヴァン・ハフェルの音を中心に追いかけていて、フレージングやら歌い上げ方やら音色やら、ことごとくツボなのである。次回作も慎んで待ってます。(なおヴァン・ハフェルのホームページでは LP が注文できるようだ)


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