Outward Bound
忘れかけた頃の、月イチ・ドルフィー。
今日は初リーダー作「Outward Bound/Eric Dolphy」を聴く。60年、オリジナルは全6曲37分。Dolphy(as,bcl,fl)Freddie Hubbard(tp)Jackie Byard(p)George Tucker(b)Roy Haynes(ds)。
うーん、素晴らしい。例えば①「G. W.」(ゴールデン・ウィークではなく、ドルフィーがロス時代に所属していた楽団のボス、ジェラルド・ウィルソンのイニシャル。のはず)。息の長いスリリングなフレージング、というか裏を返せば、拍節を無視したようなほとんどその場の思いつきとしか思えないような位置でのブレス(後年になると特に顕著)が非常に魅力的。そういえば昔、今でもやっているかどうかほとんど読まないので分からないが、SJ誌のブラインドフォールドテストで、デヴィッド・マレイが「ドルフィーのフレーズはブレスが支配している」と語っていたことを思い出した(当時、バスクラ奏者には片っ端からドルフィーを聴かせていた印象がある)。
②はドルフィーがバスクラ、ハバードがミュートトランペットで「Green Dolphin Street」(アルバム表記に従った)。余談だが、大学1年時の定期演奏会でこの曲をやったとき、自分が吹いたアドリブ1コーラスのうち最初の8小節は、ここでのハバードのコピーだった(なぜハバード?)。ちなみに残る24小節はデタラメ。卒業間近になると、32小節全てデタラメ化していた(笑)
③「Les」は、以前にも触れたが、14小節のブルース。ドルフィーのアルトはさすがだが、ハバードはやはり(?)12+2小節と捉えてアドリブを取っているようだ。④「245」は、正真正銘12小節のスローブルース。名手バイアードのムード満点のソロの後、ドルフィーのアルトが来る。最初はパーカーフレーズも交えながら実にブルージーなソロ(CD収録の別テイク⑧は更に顕著)。やがて徐々にドルフィーワールドへ。たまらん。
⑤はフルートでスタンダードの「Glad to Be Unhappy」。ハバードお休みで、味わい豊か。⑥はバスクラに持ち替え、スウィンギーな「Miss Toni」。
それにしても、収録曲にはないこのアルバムタイトル。誰が付けたのだろうか? 実にピッタリだ(「Outward Bound」は慣用句では「外国行き」という意味だが、ここは文字通り「外側へ向かって」と訳すべきだろう)。ドルフィーはどんどん「外側」へ向かっていき、ついには最後の公式アルバム「Out to Lunch」で、外出したまま帰ってこない。何もかも出来すぎに思えて仕方がない。