Cubic Zero / Flying Umishida
忙しさにかまけていたら、またしても間があいてしまった。なにしろ週末に更新される JazzTokyo 最新号にも、昨年の初寄稿以来初めて寄稿しなかったぐらいである(なんか変な言葉遣いだ)。が、本職のほうがようやく落ち着いたので、また少しずつ再開していこうと思う。ので、今後もゆるりとお付き合いください。
というわけで再開第1弾は、やはりこのアルバムでなければならないだろう。
Cubic Zero / Flying Umishida(Nonoya Records, 2018)
吉田野乃子 (sax) 本山禎朗 (keyb) 佐々木伸彦 (g) 大久保太郎 (b) 渋谷徹 (ds)
これは大変な傑作なのである!!
ということは、雉子の雌鳥ゃ女鳥だが、
まさかとは思うけど、まだ聴いてない人はいないよね?
4回(twitter 含む)も同じフレーズを繰り返すのは芸がないので、少しアレンジしてみた。
というわけで、野乃子ちゃんの最新グループ、待望の新作が出た。昨年の結成時は「エレクトリック・ヨシダ(仮)」と称呼されていたけれど、今年2月に公募が行われ(提案者の中には大友良英氏も含まれている)、3月にこういう正式名称となった。ちなみに、名付け親(の一人)は私である。
完全立方体だから、Cubic Zero とか…
— JOE (@JOE_as) February 21, 2018
Cubic Zeroという名前は、ツイッターではJOEさんに、facebookの方ではYamaiさんにご提案いただきました!お二人、ありがとうございました!!!!!元ネタはラーメンズの『零の箱式』です。
— Nonoko Yoshida 吉田野乃子 (@nonokoyoshida) March 17, 2018
各曲に関しては、野乃子ちゃんの父君の解説が、痒いところに手が届く大変詳しいものなので、そちらを参照していただきたい。(某メンバーから数か所ツッコミが入ったようだが、大勢に影響はない)
熊「お~い!Cubic ZeroってバンドのCD、聴いたか?」
— konta (@kontanotiti1) 2018年7月28日
八「あぁ、すっげえ音だったな」
熊「なんか、裏解説書なるもの出てるらしいぞ」
八「CDにはライナーノーツらしきものなかったぞ」
熊「だから裏なんだべ」
八「何が書いてあるのよ?」
熊「メンバーしかわからない情報だ」
八「いいのか?それ」 pic.twitter.com/Jd4gLjzs8u
さて、ここからは私の感想というか蛇足だが、最初のグループ名が「エレクトリック・ヨシダ」だったため、初見ではてっきり彼女の師ジョン・ゾーンの「エレクトリック・マサダ」に範をとったエレクトリックなハードコアジャズでも演奏するのだとばかり思っていたのだけれど、そうでないことがライブを重ねるたびに明らかになっていった。手法としてはインプロもあるし、ジャンクノイズもハンドサインも変(態)拍子もあるけれど、端的に言えばエレクトリックを纏ったジャズグループなのであって、衣をアコースティックに着せ替えれば「トリオ深海ノ窓」になるだろうし、彼女1人で演奏すれば「Lotus」になっても不思議でない。父君がやはり twitter で「野乃屋レコーズ3部作」と呼んでいたが、そうまさにこの3枚には一貫した吉田野乃子のジャズが底流している。ちなみに今回、彼女が10代最後の年に吹き込んだ「岩見沢カルテット」も聴き返してみたけれど、11年前から彼女の本質は何ら変わっていない、と確信を強くした(そういえばこのCDRにも「Nonoya Records」の記載がある)。彼女は、わたしを含む多くの人の前にノイズサックス奏者として現れ、現在でもそう自称も他称もしているけれど、父君の発言ばかり引用して申し訳ないがこの作品はジョン・ゾーンや椎名林檎やEW&Fやイーグルスや日野元彦らにインスパイアされているそうであるし、彼女のサックスのルーツには昨年の「三十路祭り」の冒頭でコピー演奏したデヴィッド・サンボーン(バラしてしまった)もいるし、彼女が大野雄二の音楽の大ファンであることも有名だし、今まで観た聴いた共演した好きな人たちの音楽を自家薬籠中に無理なく同居させながら、何より自分の好きなことをサックスで表現したい(そしてできる)自然体の音楽家なのだということを強調しておきたい。三十路祭りのレビューでも書いたように、彼女は『渡米前、渡米後、帰国後、その全ての経験をフル動員し、その活動を多方面に花開かせようとしている』。これからもますます楽しみだ。
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野乃屋レコーズ nonoko_yoshida@yahoo.co.jp