あうとわ~ど・ばうんど

モントルー・ジャズ・フェスティヴァルの渡辺貞夫

先日ソニー・ジャズ・コレクションで食指をそそられたのはゲイリー・ピーコックの2枚だけなどと書いておきながら、こっそり他にも買っておいて、こうして、それについて書こうとしているのだから世話はない。

渡辺貞夫(as, fl, sopranino) 増尾好秋(g) 鈴木良雄(b) つのだ☆ひろ(ds)


昔このアルバムの「東京組曲」をFMで聴いたことがあって、でもその時は「ふーん」と思ったのみで、その後も気に留めなかった。のちに聴いた同じモントルー・ライヴの「スイス・エア」が傑作だったために、ナベサダモントルー録音は「スイス・エア」が圧倒的に上、という評価だったのだが、今回気が向いて初めてアルバム全体を聴いてみたら、印象が変わったのである(さすがに2枚の序列までは変わらないけど)。

冒頭の「ラウンド・トリップ」は、このライヴの翌月に決定版が吹き込まれることになる(「ラウンド・トリップ昨年9月24日参照)が、こちらのヴァージョンも決して悪くはない。日本人グループとして初のモントルー出演ということで、肩に力が入ったような窮屈さも感じないではないが、リーダー以下、当時20代前半の増尾好秋つのだ☆ひろ(当時・角田ヒロ)の、若さに任せたようなプレイが好もしい。

一方、冒頭の司会者(おそらくクロード・ノブスだろう)が「サダオ・ワナタベ」と紹介するところは笑ってしまう。つのだ☆ひろは「ワナタベだって」と言って笑い転げている。日本制作盤なのに、たぶんドキュメント性を重視したのだろうが、カットせずわざわざ収録したのは英断だったろう。ほかにも「東京組曲」に入る前のメンバー紹介で、渡辺が「マスオ・ヨシアキ」「スズキ・ヨシオ」と来て「ヒロ・ツノダ」と、ドラマーだけ姓名をひっくり返してアナウンスしているのも面白い(直後に気づいたのか、渡辺自身も笑っている)。

ところで、オビ(裏側)に嘘は書かないでほしい。