あうとわ~ど・ばうんど

酔った猫が低い塀を高い塀と間違えて歩いているの図

どんな気分か説明せよと問われても困るが、まだ続いている。「酔った猫が低い塀を高い塀と間違えて歩いているの図/渋谷毅オーケストラ」(carco)。94年、全7曲53分。
渋オケは、このアルバムや『Live 1991』のメンバーの頃が一番好きだ。たぶん、一番最初に生で聴いたのが、このメンバーだったからだろう。92年、今はなき小樽VJだった。型通りのアンコール(ラウンド・ミッドナイト)が終わった後も、拍手は続いていた。やがて渋谷がうれしそうに再登場、ピアノソロを始めた(『タリラリ・ブルース』みたいな曲だった気がする)。終わると「もう1曲やりましょうか」。いや、ホントに印象的なライヴだった。
その後に出たこの作品には、ハマったハマった。何しろ名曲ぞろい。表題曲のとぼけた味と、中間部の臼庭潤のソプラノ(ホーン陣ほぼ唯一のオーソドックススタイルの彼が、逆にスパイスだった)。③「Frank」での林栄一のハチャメチャなアルト。④「Return for Good」のスルメイカ的深み(そういえば、後輩のバンドでこの曲やったことあったっけ。もう10年前か・・)。⑤「Carrie」での、今は亡き板谷博の珠玉のトロンボーン。楽しさいっぱいの⑥「Jazz Me Blues」。最終曲「A New Hymn」での、心に突き刺さる峰厚介のテナー。1曲飛ばしたが大丈夫。②「Utviklingssang」は、一番好きな演奏だ。この曲のおかげで、林栄一のフリーキーなサーキュレーションソロを聴くと(どんな曲調であろうと)脊髄反射的に切なさを感じるようになってしまったのだ。