あうとわ~ど・ばうんど

Some Shapes To Come

話題になっているTerje Rypdalの新譜「Vossabrygg」を聴いたのだが、イントロがもろ『ファラオズ・ダンス』の冒頭曲がエレクトリックマイルス・リスペクタブル前面の演奏で時折ニヤリとさせられる以外、個人的には退屈だった。内容的には良いところもあるのだが、ECM特有の録音のせいなのか、あまり胸に迫ってこないのだ(自分はやっぱりECM苦手だなあ。Chris CheekとTony Malabyが参加してたので期待して聴いたPaul Motianの新作にも、首を傾げさせられた)。
ということをぼんやり考えながら、日本初CD化というSteve Grossmanの初リーダー作「Some Shapes To Come」(73年、全7曲43分)を聴いた瞬間、見事に引き込まれた。冒頭曲「WBAI」から、Grossman(ts)Jan Hammer(elp,syn)Gene Perla(b)Don Alias(ds)の発する熱風に吹き飛ばされそうだ。印象に残ったのは④、「即興的燃焼」と邦題の付いた「Extemporaneous Combustion」。5分すぎ、グロスマンとハマーが突出する瞬間がよい。⑤「Alodian Mode」は、グロスマンとアライアスが在籍したマイルス・バンド的空間を感じさせる。アルバム全体を通しても、激しい熱気、やむにやまれぬ切迫感が伝わってくる。その切迫は、おそらくその時代の“現在性”の表出だろう。Rypdalとの違いはミキシングの違いではなく、たぶんその辺にあるのではないかと思う。