あうとわ~ど・ばうんど

百八煩悩

坂田明の新作「百八煩悩」が届いた。不思議な作品だ。初の完全ソロ(独奏)、2枚組全90分。と書くと全然不思議ではないが、うまく説明できるかどうか。
なんと全108曲。菊地成孔「Degustation A Jazz」の41曲をはるかに超える荒技だ。長くて2分、短くて数十秒の曲には、それぞれ百八つの煩悩の名が付けられている。使用楽器はクラリネット、アルト、バスクラ、声(1曲だけ)。そうしてブレス音、タンポ音、うなり声、通常音、フラジオ音などさまざまな音を駆使して、あるときは優しいメロディーを奏で、あるときはらしからぬ?バップ風フレーズを披露し(27曲目「不苦不楽受」なんて、もろブルースだ)、あるときはフリーキーに攻める。曲というよりも、断片、あるいはただ「演奏」というほうが正確かも。
聴きにくさはまったくない。むしろすがすがしささえ感じる。90分後、「あれ、もう終わり?」という感じだ。108の演奏は坂田明のエッセンスのコラージュとも取れるし、全体を通して聴けば、細部の積み重ねによる一大組曲と取ることも可能だ。ちなみに、聴き終えた後、煩悩が消えているかと思ったが、そんなことはまったくなかった(当たり前だ)。