あうとわ~ど・ばうんど

Tomas Fujiwara - Triple Double

例によって bandcamp でCDを注文しつつ、デジタル音源を聴く。

Triple Double

Triple Double

Tomas Fujiwara(ds) Gerald Cleaver(ds) Mary Halvorson(g) Brandon Seabrook(g) Taylor Ho Bynum(cor) Ralph Alessi(tp)


アルバムタイトルであり、グループ名でもある(らしい)『Triple Double』とは、同じ楽器による3つのデュオというコンセプトを象徴しているのだろう。あるいは2つのトリオの意味もあると思われる(ちなみにアレシ、シーブルック、フジワラは Tomas Fujiwara Trio のメンバーである)。冒頭いきなりメアリーとシーブルックの双子のようなギターデュオから始まるのだが、同じ楽器同士に限らずとも演奏曲によってはシーブルックとクリーヴァー、メアリーとフジワラ、というデュオもあったりして、さまざまな組み合わせ(理論上デュオは15通り(6C2)、トリオは20通り(6C3)あるわけだが)を核にして、しかしけっしてコンセプト過多には陥らない様々なタイプの曲が演奏されていくのは流石であり、とても楽しい。


ティザー
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Devin Gray / Ingrid Laubrock / Cory Smythe - Cloudsounds


Devin Gray / Ingrid Laubrock / Cory Smythe - Cloudsounds
Ingrid Laubrock(ts, ss) Cory Smythe(p) Devin Gray(ds, compositions)


デヴィン・グレイの新作デジタルアルバム。包容力豊かなラブロックのサックス、重厚さと繊細さを兼ね備えたグレイのドラム、理知的で空間に楔を打ち込んでいくようなスマイスのピアノが調和した三位一体サウンドが心地よい。しかもインプロではなく、全てグレイの作曲であるらしいことも驚き。惜しむらくは2~6分の全5曲、計20分ほどの小品アルバムであること。これは予告編であって、しかるべき時期にフルアルバムが出てくれるのだと期待したい。

Tim Berne / My First Tour - Live in Brussels

ティム・バーンが34年前の演奏を突然リリースした。しかも、なんと無料である。


Tim Berne / My First Tour - Live in Brussels
Tim Berne(as) Paul Motian(ds) Ed Schuller(b) Herb Robertson(tp)


ティムが(おそらく)自己のグループを率いて初めて出たヨーロッパツアーから、1983年2月のブリュッセルにおける演奏が収録されている(なお、その翌月にミラノでスタジオ録音されたのが Soul Note の「Mutant Variations」だ)。bandcamp ページの解説によれば、ティムが所有する古いカセットテープから、モチアンの一側面を知ってほしいと考えたのがリリースの動機だそうで、たしかに後年の繊細なイメージとは異なるポールのパワフルなプレイを聴ける。とはいえ私の目当てはやはり若き(とはいっても20代後半の)ティムのアルトであって、まずは冒頭、無伴奏ソロにおける訴求力の高い音(元テープに起因すると思われるピッチの揺れが多少気になるものの)に惹きつけられる。彼自身は当時の演奏を発展途上と評していて、たしかにスタイルはまだオーソドックス寄りではあるものの、時間間隔を狂わせるような現在の彼につながる片鱗を随所でみせてくれるから満足だ。


参考音源
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Roligheten - Homegrown

前の2枚に比べれば小粒ではあるが。

Homegrown

Homegrown

André Roligheten(ts, ss, bcl) Adrian Løseth Waade(violin) Jon Rune Strøm(b) Erik Nylander(ds, perc)


「Roligheten」はグループ名でもあり、リーダーの名前でもあるが、このエントリを書き始める直前まで、この人の参加作をこれまでに3枚も取り上げていたことに全く気付いていなかったのは迂闊な限りであった。スモーキーでくぐもったサックスとヴァイオリンのアンサンブルが融和していて、郷愁を誘うような各曲想と相まって心地よい。14日の Cortex もそうだったけれど、最終曲に「Kathleen Gray」(from 「Song X」)をやっているからというだけでなく、オーネット・コールマンドン・チェリーのカルテットの影響をこれまた如実に感じさせるのが興味深い。

Der Verboten

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Der Verboten
clean feed, 2017)
Frantz Loriot(viola) Antoine Chessex(ts) Cédric Piromalli(prepared piano) Christian Wolfarth(perc, cymbals)


もともとはフランツ・ロリオとセドリック・ピロマリが、ミッコ・イナネンらを招いたグループに「Treffpunkt」と名付け、次に別の2人に差し替えたグループには Treffpunkt の日本語訳である「Kaijo(会場)」と名付け、たにもかかわらず、アントワーヌ・シェセックスらを招いた今回のグループには全く別のコンセプトによる名前が付けられている。のであるけれど、演奏されているのは「Der Dritte(3番目の) Treffpunkt」だそうである。ということはさておき、40分に及ぶこの演奏は素晴らしい。積水淵を成し大河に育つような、山あり谷ありドラマチックな即興音楽である。


試聴(このライブがそのままアルバムとしてパッケージされている)
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Cortex - Avant-Garde Party Music

ようやく clean feed の新譜に取り掛かる。

Avant-Garde Party Music

Avant-Garde Party Music

Thomas Johansson(tp) Kristoffer Berre Alberts(sax) Ola Høyer(b) Gard Nilssen(ds)


クリストファー・アルバーツが参加する Cortex の CF から3枚目(通算5枚目)のアルバム。レーベル HP の解説でオーネット・コールマンドン・チェリーの影響を指摘する通り、今作のコンポジション(全曲がトランペットのヨハンソンの手による)はオーネット・カルテットふうである。けれど、演奏までそうかと言えばそんなことはなくて、アルバーツは相変わらずへしゃげた管を無理矢理吹いているような独特の魅力ある音色で、正統派ではありえない妙ちきりんなソロを吹き、ヨハンソンのトランペットもチェリーとは無縁の痙攣のようなフレーズ(ハンニバルを思い出す)を吹き散らかすが、「Party Music」の名の通り、体を自然に揺れさせるようなノリの良さも忘れていない。とはいえ、たしかにオーネットたちの音楽の自由さに対するリスペクトはしっかり感じ取れる気がするのだ。

Ornette Coleman - Ornette at 12 / Crisis

オーネット・コールマン60年代末、impulse! 時代の2作品が、ツーインワンで待望のCD化となっている。

ORNETTE AT 12/CRISIS

ORNETTE AT 12/CRISIS

Ornette At 12 : Ornette Coleman(as, tp, violin) Dewey Redman(ts) Charlie Haden(b) Denardo Coleman(ds)
Crisis : Ornette Coleman(as, tp, violin) Don Cherry(cor, indian fl) Dewey Redman(ts, cl) Charlie Haden(b) Denardo Coleman(ds)


Blue Note 時代と Columbia 時代の狭間とはいえ、なぜこの2作品がCD化されていなかったのか理解できない(もしかすると当時10代前半だったデナードのせいかもしれないが、悪くはないと思う。ちなみに彼は「Crisis」の後10年間、「Tales of Captain Black by James Blood Ulmer」の録音まで表舞台には出てこない)。内容的には「at 12」よりも、id:zu-ja さんがツイッターアイコンに使っている「Crisis」が圧倒的。5曲それぞれに個性が違っていて、しかも集合体としてのバランスも良く、スタジオに観客を入れた前作とは異なり正真正銘のライブアルバムのためか演奏も熱く、タイトルにあるような「危機」は微塵も感じない。

なお今月下旬には、続く Flying Dutchman 時代の「フレンズ&ネイバーズ(オーネット・ライヴ・アット・プリンス・ストリート) (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)」も国内初CD化となるそうな。


試聴
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