あうとわ~ど・ばうんど

Bobby Zankel & The Wonderful Sound 6 - Celebrating William Parker @ 65

Not Two Records の新譜も届いた。

Celebrating William Parker at 65 (feat. William Parker)

Celebrating William Parker at 65 (feat. William Parker)

Muhammad Ali(ds) Dave Burrell(p) Diane Monroe(violin) William Parker(b) Steve Swell(tb) Bobby Zankel(as)


なかなか良かった。今年1月に65歳となったウィリアム・パーカーを迎えたボビー・ザンケルのアルバム。ということで、事前に YouTube で検索してみたリーダーのオーソドックス寄りのプレイに不安を抱いてもいたのだけれど、いやはや不明を恥じるばかり。49年生まれのザンケルは、70年代初頭にセシル・テイラーのラージアンサンブルに加入し、そこでパーカーと出会ったという経歴の持ち主で、若き日に身に付けたフリージャズマナーが今もしっかり息づいている。オーネット的な鷹揚さを垣間見せたり、セシルの下を去来したアルト奏者たちを彷彿とさせたり、ロフトジャズ的な快楽もある。


参考動画(ザンケルとデイヴ・バレルのデュオ)
www.youtube.com

Fred Van Hove / Roger Turner - The Corner

Relative Pitch Records のアルバムがドサッと届いたが、まずは。

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Fred Van Hove / Roger Turner - The Corner
Relative Pitch Records, 2017)
Fred Van Hove(p) Roger Turner(ds, perc)


これは素晴らしい。齢80歳のピアニストと70歳のドラマーによる演奏(2015年録音なので、実際には当時70代と60代ということになるの)だが、ともに音がとても瑞々しく生命力に満ち満ちている。きらびやかな一音一音が寄り集まって鮮やかな音楽をかたち作っていくさまは、ありきたりな比喩だが万華鏡や曼荼羅を観る思いである。


参考動画(おそらくこのライブがアルバム化されたと思われる)
www.youtube.com

Konstrukt featuring Alan Wilkinson, Alexander Hawkins & Daniel Spicer - Lotus

久しぶりに OTORoku のデジタル音源をダウンロードする。これも先日同様にアラン・ウィルキンソン参加作品。

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Konstrukt featuring Alan Wilkinson, Alexander Hawkins & Daniel Spicer - Lotus
OTORoku, 2017)
Korhan Futaci(as, ts, fl, sipsi, kaba zurna, vo) Umut Çaglar(elg, gralla, bamboo fl, pocket drum machine, xylophones, perc, tape echo) Barlas Tan Özemek(elb) Ediz Hafizoglu(ds, cymbals, bells, turkish hang drum) + Alexander Hawkins(p) Alan Wilkinson(bs, bcl, vo) Daniel Spicer(pocket tp, bugle, bamboo sax, shenai, recorder, pan pipe, whistle, cow bell, kalimba, vo)


Konstrukt はトルコのフリージャズバンド。もはやそれがグループのアイデンティティーとなっているのか、ビッグネームたちと共演してはアルバムを出しまくっていて、本作も Cafe OTO の地元・英国を拠点とするミュージシャンたちとのコラボレーション。相手は、昨年10月に聴いたデジタル作品でも共演していた80年代生まれピアニストであるアレクサンダー・ホーキンス、おなじみの凶暴サックス奏者アラン・ウィルキンソンのほか、ダニエル・スパイサーというひとのことはよく知らない。Konstrukt は相変わらず、ときに土俗性も感じさせるごった煮サウンドを展開していて、前掲作よりも使用楽器が多いせいか彩りは増し、こういうシチュエーションにあっては、呼吸ではなく情念で管体を震わせているかのようなウィルキンソンの音がよく映える。エヴァン・パーカーとのデュオ作品のほか、最近耳にする機会の多くなってきたホーキンスのピアノも其処彼処で存在感を主張している。


試聴

Double Vortex - Quartet & Quintet

bandcamp でジョン・ダイクマン参加の新作を聴く(正式発売は9月だが、デジタル音源は先行ダウンロードできる)。


Double Vortex - Quartet & Quintet
a new wave of jazz, 2017)
John Dikeman(ts) Andrew Lisle(ds) Dirk Serries(elg) Colin Webster(as, bs) Alan Wilkinson(as, bs)


1枚目がダイクマン、リズル、セリーズ、ウェブスターの「カルテット」、2枚目はそこにウィルキンソンが加わった「クインテット」という構成。ダイクマンをはじめ、どの顔も見るからにむさ苦しく(失礼)凶悪そうな面構え(重ねて失礼)であって、発せられる音楽もまた、暑苦しい漢気フリージャズというべきだろう。フリージャズにはスポーティーな快感というものも当然あるわけだけれど、こういう愚直なまでに汗臭く血生臭く熱気と殺気に満ちた演奏がやっぱり魅力なのである(まあさすがに多少ダレる個所はあるのだが)。


参考動画(カルテット)
www.youtube.com

藤井郷子 / インビジブル・ハンド

先月25日の藤井・田村・瀬尾・小山ライブ時、この旧作も買っていた。

インビジブル・ハンド (CSJ0001/0002)

インビジブル・ハンド (CSJ0001/0002)

藤井郷子(p)


茨城県水戸のジャズ喫茶「Cortez」における昨年4月のソロライブ2枚組、店主宰レーベルからのリリース。1枚目はインプロ、2枚目は自作曲が中心で、そのぶん2枚目のほうが音楽に入り込みやすいかもしれない。藤井さんのピアノおよび楽曲の魅力は、複雑さや幻想性や過激さやらの中から滲みだしてくる「叙情性」だと思う。聴いているこちらが恥ずかしくなるようなセンチメンタルな情動は男性ピアニストに多く、聴けば聴くほどに頭の奥が冴えてくるような乾いた詩情は女性ピアニストに多い、というのが(ジェンダー論からみれば乱暴な物言いだろうが)私の印象で、後者の代表が彼女ということになる。

The Cookers - The Call Of The Wild And Peaceful Heart

先日、地元レコ店に立ち寄ったら、なぜか Smoke Sessions Records が全作そろっていて(再入荷というやつか?)、気が向いて購入した。

CALL OF THE WILD &

CALL OF THE WILD &

Eddie Henderson(tp) David Weiss(tp) Donald Harrison(as) Billy Harper(ts) George Cables(p) Cecil McBee(b) Billy Hart(ds)


グループはトランペットのデヴィッド・ワイスがベテランプレイヤーを迎えたプロジェクトで、ビリー・ハーパー聴きたさにしばらく追いかけたが、2、3枚ほど聴いたところでもういいやという気分になっていた。本作は5枚目にあたるらしい。全8曲の内訳は、ハーパー作3曲、ケイブルス作2曲、マクビー作1曲、ハート作2曲、という構成。ハーパーの3曲はタイトル曲のほか、「If One Could Only See」「Thy Will Be Done」とお馴染みの曲で、他の曲はよく知らないが、まあ似たようなものなのだろう。目当てのハーパーは、ワンホーンアルバムでは一本調子なところが目立つのが玉に瑕だけれど、こういう多管編成ではそういった面はあまり気にならないというか、存在感は一頭地を抜いていて、やはりたいしたものである。もっともアルバム全体を通してみると、ベテラン達ならではの安定感といえば聞こえはいいけれど、様式美というか、お約束というか、そういう部分が耳についてしまうのが致し方ないところで、それが聴かなくなった理由でもあるのだが。


EPK
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Andy Emler - Running Backwards

ティム・バーンの旧相棒、マルク・デュクレ参加の新作を聴く。

Running Backwards

Running Backwards

Andy Emler(p, composition) Marc Ducret(g) Claude Tchamitchian(b) Eric Echampard(ds)


フランスのグループ。収録7曲は全てリーダーのオリジナルで、どれもよく練られた構造を持っている(曲によってはデュクレのオリジナルと勘違いしそうな魔訶怪奇な曲想もあり)。デュクレのギタープレイにはやはり「さすがー」と唸るし、各人の演奏技術も高いし、とても印象的な瞬間瞬間が訪れるし、レベルの高い音楽である。のだけれど、アルバム全体としては何故か突き抜けてくるものが少ない、という困った感想だったりする。うーむ…。


参考動画
www.youtube.com