あうとわ~ど・ばうんど

Nate Wooley - Polychoral (with Peter Evans)

Nate Wooley に直接注文していた新譜が届く。

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Nate Wooley - Polychoral (with Peter Evans)
MNOAD, 2016)
Nate Wooley(tp) Peter Evans(tp)


ネイト・ウーリーとピーター・エヴァンスのトランペットデュオ。と言われれば、どんな過激な音世界が渦巻くのだろう、と期待するのがふつうである。が、スピーカーから聴こえてきたのは、どちらかといえばアンビエントな音空間である。2人が使っているのはトランペットだけということになっているが、YouTube で公開されている録音時の模様(後掲)をみると音響機材や技術を駆使していて、まあこれも過激といえば過激といえるし、現場で体感したら楽しそうではある。しかし残念ながらCDで聴けるのは上澄みだけ、という印象で、もっとも私が2人に求めているのも、そもそもこういうものではないんだよなあ。


参考動画
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John Butcher & Ståle Liavik Solberg - So Beautiful, It Starts To Rain

So Beautiful It Starts to Rain

So Beautiful It Starts to Rain

John Butcher(ss, ts) Ståle Liavik Solberg(ds, per)


ジャケには、窓?をつたう雨粒があしらわれている。1曲目が「So Beautiful」、2曲目が「It Starts」、最終3曲目が「To Rain」で、合わせてアルバムタイトルが「So Beautiful, It Starts To Rain」。詩的センスの欠如を承知で無理に一つずつ訳せば、「なんて美しいんだ」「始まりは」「雨降りの」という感じだろうか。ブッチャーによるフリージャズやフリーインプロヴィゼーションに限らず、ジャズ、あるいはただ音楽、もしくは(人による)創作物は全て、といってよいかもしれないが、巨視的にはおおむね同じだが、微視的には一つとして同じものはない。雨降りというのも漫然と眺めればいつもだいたい同じ光景であるが、一粒一粒に目を凝らせば、それはいつも違う、その時初めて出遭う「かたち」ばかりであろう(もっとも、以前に見た「かたち」を完璧に記憶してはいないけれど)。創作物を味わう、ということもそれに似ている。などと、スピーカーから発せられる音に触れ、ジャケを眺めながら、ぼんやり考えていた。


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Punkt3 - Ordnung Herrscht

clean feed の新作群をまとめ買いするにあたり、いつも目にする人たち以外の作品も聴いてみようと思い、ジャケ買い

Ordnung Herrscht

Ordnung Herrscht

Tobias Pfister(sax) Noah Punkt(elb, composition) Ramón Oliveras(ds, per)


全く知らない人たちばかりだと思っていたら、リーダーのベーシストは Chris Pitsiokos の「Protean Reality」(2月7日参照)に参加していた人だと後から気づいた。グループはコードレスサックストリオ編成で、サックスは歯切れの良いクリス・スピード・タイプとでもいうか、アルバムとしても Skirl Records あたりから出ていてもおかしくない軽やかな現代ジャズ、という印象。曲は全体に短めで、中盤で演奏されている「Pacgirl」(日本で言えば、パックマンみたいなものだろうか)に代表されるようにゲーム音楽のようなイメージ。


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John Zorn - Commedia dell'Arte

Commedia Dell'arte

Commedia Dell'arte

Claire Chase(fl) Josh Rubin(cl, bcl) Rebekah Heller(bassoon) Kyle Armbrust(viola) Sarah Brailey(voice) Eliza Bagg(voice) Rachel Calloway(voice) Kirsten Sollek(voice) Steve Gosling(p) Christian McBride(b) Tyshawn Sorey(ds) Kevin Cobb(tp) Louis Hanzlik(tp) Eric Reed(horn) Michael Powell(tb) John D. Rojak(btb) Jay Campbell(cello) Mike Nicolas(cello) Jeff Ziegler(cello) Mihai Marica(cello)


ジョン・ゾーンの作曲家名義作品。「Madrigals」(3月24日)、「JOHN ZORN'S SACRED VIS」(8月7日)とアカペラ女声コーラスの入ったアルバムが気に入り、一曲しか入っていない新作はどうしようか悩んだが、結局買ってしまった。


本作のテーマは、仮面即興喜劇「コメディア・デッラルテ」。収録5曲のタイトルにはそれぞれ代表的キャラクター名があてられ、室内楽四重奏、女声四重奏、ピアノトリオ、金管五重奏、チェロ四重奏として演奏され、ヴァラエティに富んでいて楽しい。(ちなみにピアノトリオは、クリスチャン・マクブライドのベースとタイショーン・ソーリーのドラムに、ピアノがなぜかクラシック系の奏者というのが意表を突かれるけど、いやあ悪くない)。ところで女声四重奏の曲名には女性召使いの「Columbina」があてられているのはまあ順当として、他の4曲のタイトルがいずれも「道化」を意味するキャラクターであるあたりが興味深い。


(なお、amazon の画像表示はジャケが間違っていて、これはライナーノーツの表紙である。実物はこちら参照)

Black Bombaim & Peter Brötzmann

Black Bombaim & Peter Brötzmann

Black Bombaim & Peter Brötzmann

Ricardo Miranda(elg) Tojo Rodrigues(b) Paulo Gonçalves(ds) Peter Brötzmann(sax)


clean feed の姉妹レーベル shhpuma から発売された、ポルトガルのインスト・ロックバンドとブロッツマンの共演。ロックバンドの面々はおそらく楽理をしっかり分かっていてロックテイストを塗しているような印象であり、対するブロッツマンはと言うと無茶苦茶はせず、求められている自分の仕事をこなしているように見え、つまりは破綻も無いロックフュージョン的なサウンドである。残念ながらそれ以上でも以下でもない。


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Damana - Cornua Copiae

Kristoffer Alberts 参加作をもう一枚。

Cornua Copiae

Cornua Copiae

Kristoffer Alberts(as) Jørgen Mathisen(ts) André Roligheten(bs, bcl) Hayden Powell(tp) Kristoffer Kompen(tb) Øyvind Dale(p) Adrian Myhr(b) Dag Magnus Narvesen(ds)


グループ名の「Damana」は、リーダーの名前「Dag Magnus Narvesen (Octet)」が由来らしい。ドラマーであるリーダーの手による作曲はトラディショナルからコンテンポラリーまで、衒いの無いストレートジャズ風味で、憂愁を掻き立てるような曲想も多く、入れ代わり立ち代わり登場するメンバーたちは、ノルウェーのミュージシャンらしく皆うまい。しかし中でも、時に爆裂的なソロをかますアルバーツは、ああなるほどやっぱりこの人はカッチリした構造の中で暴れた方が面白いよなあ、と再認識させる。そのさまは日本で言えば、まあ伏字にする必然性はないけれどア○タ・オーケストラを想起させ、そういえば本盤の中ではピアノの個性(むろんア○タさんとは全く違う)にも惹きつけられた。


参考動画
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Steve Noble & Kristoffer Berre Alberts - Coldest Second Yesterdays

Clean Feed の新譜では、管がひしゃげてるんではないかと思わせる独特の魅力的なトーンを持ったサックス奏者 Kristoffer Berre Alberts の参加作が2枚出ている。まずはこれを聴く。

Coldest Second Yesterdays

Coldest Second Yesterdays

Steve Noble(ds) Kristoffer Berre Alberts(ts)


スティーヴ・ノブルを向こうに回してのフリーデュオ三本勝負。アルバーツはとにかく音がいいので演奏に牽き込まれつつも、途中ややワンパターンかもという箇所がないではないのだけれど、そこは百戦錬磨のノブルが相手、多彩な味付けで盛り立てている。3曲30分強という収録時間もちょうどいいのかもしれない。


(レコーディング同日の映像)
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