あうとわ~ど・ばうんど

Eloisa Manera - Invisible Cities

PBB の新作「Big Hell on Air」(8月13日参照)が満を持して国内入荷と相成ったが(ただし、ディスクユニオンのインフォは間違いで「初リーダー作」ではない)、機を一にして Aut Records からも参加作がリリースされている。


Eloisa Manera - Invisible Cities
Aut Records, 2016)
Eloisa Manera(vln, voice, compositions, arr) Gianluca Barbaro(recorders, ewi) Piero Bittolo Bon(as, bs, cl) Andrea Baronchelli(tb) Pasquale Mirra(vib) Danilo Gallo(b, elb) Ferdinando Faraò(ds) Roberto Zanisi(cümbüş, cifteli, bouzuki, per, voice, objects) Walter Buonanno "Bonnot"(electronics)


リーダーはイタリアの女性ヴァイオリン奏者で、アルバムで展開されているのはコンテンポラリージャズというべきだろう。アルバムタイトルはもちろん、収録されている12曲すべての題名に「Cities」と名付けられ、さまざまな効果音的演出なども駆使しながら、言ってみればさまざまな「都市」を旅するように聴かれるべき音楽、とでもいうコンセプトだろうか。まあ私の耳は常に PBB のサックスの音に惹きつけられていて、彼のプレイはどんなフォーマット・セッティングであろうと、いつだって爽快に、魅力的に響くのだ。



Piero Bittolo Bon の過去記事アーカイブ(旧ブログ)

Taylor Ho Bynum - Enter the PlusTet

Firehouse 12 Records からメアリー参加作が同時リリースされている。

Enter the Plustet

Enter the Plustet

Nate Wooley(tp) Stephanie Richards(tp) Vincent Chancey(frh) Steve Swell(tb) Bill Lowe(bass tb, tuba) Jim Hobbs(as) Ingrid Laubrock(ss, ts) Matt Bauder(ts, bs) Jason Kao Hwang(vln, viola) Tomeka Reid(cello) Ken Filiano(b) Mary Halvorson(g) Jay Hoggard(vib) Tomas Fujiwara(ds) Taylor Ho Bynum(composer, conductor, cor)


テイラー・ホ・バイナムのグループもどんどん大きくなり、総勢15人のクインデクテットと相成った。試聴で出だしの音を聴いて、アンソニー・ブラクストンの大編成物みたいな感じか(バイナムも時々音楽監督をやっているし)と思っていたのだけれど、通して聴いてみると印象が全く異なっていて、非常にジャズ的な展開の音楽なのである。15人も集めてこんなことがしたかったのか、と思うと拍子抜けしてしまう一方で、妙に感心もしてしまう。まあわたしは、メアリーに活躍の場が与えられてさえいれば、それで満足なんですけどね。


試聴

Mary Halvorson Octet - Away With You

メアリー・ハルヴァーソンの新譜を聴く。

Away With You

Away With You

Mary Halvorson(g) Susan Alcorn(pedal steel guitar) Jonathan Finlayson(tp) Jon Irabagon(as) Ingrid Laubrock(ts) Jacob Garchik(tb) John Hébert(b) Ches Smith(ds)


最近の米国ジャズ界ではオクテットが流行ってるんだろうか。メアリーのオクテットは、彼女のセプテット(13年9月11日参照)にスーザン・アルコーンのペダルスチールギターが加わった編成。加わったのがピアノでも管楽器でもなく、彼女と同じ女性ギター(楽器の形状としては毛色がかなり違うけど)というのがやっぱりミソで、4管サウンドをはじめ全体の雰囲気はセプテットとそう変わらぬのだけれど、左右に配された2本のギターによる異化効果は大きいといえそう。音質や音程をズラすそのあり様の違いはむろん、よく似ていると感じられる部分があるのが面白く、時にメアリーがメアリーの伴奏で弾いていると錯覚する瞬間も訪れる。


試聴


参考動画
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Mary Halvorson の過去記事一覧(旧ブログ)

Elliott Sharp Aggregat - Dialectrical

Clean Feed(と Shhpuma)の新譜をまとめて購入したが、まずは何となくこれを聴く。

Dialectrical Feat Barry Guy

Dialectrical Feat Barry Guy

Barry Altschul(ds, per) Taylor Ho Bynum(tp) Terry L. Greene II(tb) Brad Jones(b) Elliott Sharp(ss, ts, cl, bcl)


エリオット・シャープ率いる Aggregat の新作。グループ名義としては同レーベル2枚目で、前作「Aggregat-Quintet」のメンバーが2人交代し、トランペットがネイト・ウーリーからテイラー・ホ・バイナムに、ドラムはチェス・スミスに代わってバリー・アルチュールがフィーチャーされている(それ以前にも「Aggregat」という先行作があり、シャープ、ジョーンズ、スミスのトリオ。ちなみに前2作とも未聴である)。先日のアレックス・ワードもそうだったが、私にとってエリオット・シャープはギタリストの印象が強い(というか、どちらかといえばギターが本職だろう)のだけれど、ここで聴ける彼のサックスやクラリネットも楽しい。トランペット、トロンボーンとともにおもちゃ箱をひっくり返したような愉快なフリージャズが聴けるかと思えば、3管によるハーモニーはブッカー・リトルの「Out Front」に通じるようなゾクリとする快感がある(作曲面でもそれを実感させる)。


試聴
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Ingrid Laubrock - Serpentines

イングリッド・ラブロックに直接注文していた新譜が届く。

Serpentines

Serpentines

Ingrid Laubrock(ts, ss, glockenspiel, composition) Peter Evans(piccolo tp, tp) Miya Masaoka(koto) Craig Taborn(p) Sam Pluta(electronics) Dan Peck(tuba) Tyshawn Sorey(ds)


豪華メンバーによる新グループ Serpentines のデビュー作(なお本来はセクステットで、ピーター・エヴァンズはアディショナルミュージシャンのようだ)。サーペンタインズとは(蛇のように)曲がりくねったものを指す言葉らしいが、空間の其処彼処で生まれた音たちが、呼応するようにそれぞれの場所でトグロを巻き始め、離合集散を繰り返しながら、時にするする絡まり合い、時に複雑な曲線構造物をつくりあげる。そんな様が譬えられているのかもしれない。

Forebrace - Steeped

Relative Pitch Records の新譜を聴く。


Forebrace - Steeped
Relative Pitch Records, 2016)
Alex Ward(cl, amplifier) Roberto Sassi(elg) Santiago Horro(elb) Jem Doulton(ds)


レックス・ワードの新作。アレックスというと私は元々、彼のアグレッシヴなギタープレイを愛していたのだけれど、最近はようやくリード奏者としての魅力にも開眼しつつある。この作品ではギターはグループのメンバーにお任せで、彼自身は全編にわたってクラリネットを駆使している(メンバーは知らない人たちばかりだけれど、名前から察するにイタリア系だろうか)。エレクトリックギターやベースによるファンクネスなサウンドの上をアレックスのクラリネットが飛翔するさまは、(○○のようだ、という表現はあまり好ましくないことは承知の上で)KIKI BAND で梅津和時さんがクラリネットを演奏している時に似て、とても爽快である。

Charlie Haden Liberation Music Orchestra - Time / Life

少々サボっていた。が、徐々に再開していきたい。

TIME/LIFE

TIME/LIFE

Carla Bley(p) Charlie Haden(b) Steve Swallow(b) Tony Malaby(ts) Chris Cheek(ts) Loren Stillman(as) Michael Rodriguez(tp) Seneca Black(tp) Curtis Fowlkes(tb) Vincent Chancey(frh) Joseph Daley(tuba) Steve Cardenas(g) Matt Wilson(ds)


待望のLMOのチャーリー・ヘイデン追悼盤。聴いた感想は Twitter のタイムラインで見かけたものや Sightsong さんらとおおむね同じなのだが、私は全編がカーラ・ブレイのオーケストラ音楽という印象だった。これは偏見なのだが、LMОの音楽というのは、ヘイデンの描くメロドラマをカーラが抑制的に演出することで通にも受ける滋味風味を帯びるのがミソだと思っていて、そういう意味では本作はヘイデン成分が薄く、試しに続けて第1作「Liberation Music Orchestr」や続く「The Ballad Of The Fallen」を聴いてみて、その思いを強くしたのだった。また、かつてのオーケストラはタレント軍団による「楽隊」であったのに対し、現在は「楽団」で、皆なんともお行儀が良いと感じてしまう(トニー・マラビーだけは、かつてのタレントたちに伍するレベルにあると思うが)。などと書いているとまるで貶してるみたいだが、カーラの音楽として聴くなら十分に愛玩の対象である。