あうとわ~ど・ばうんど

Illegal Crowns

Mary Halvorson の新譜をようやく聴く。

Illegal Crowns

Illegal Crowns

Mary Halvorson(elg) Tomas Fujiwara(ds) Benoît Delbecq(p, prepared piano) Taylor Ho Bynum(cor, flh)


これは聴けば聴くほどに滋味深い。メアリー~トマ~テイラーの鉄壁トライアングルに、ブノワのピアノがどう絡むかと思いきや、むしろ鉄壁のクワドラングルとなっている。あるいはテトラヘドロンとでもいおうか。4者の奏でる音は実軸を共有しつつそれぞれに異なる複素数空間を辿るように見え、しかしユークリッド空間にいるわれわれの耳には、摩訶不思議な魅力をたたえた音楽として聴こえるようだ。ブノワの参加の影響か、どこかヨーロッパ的なノスタルジーやエレジーが嗅ぎ取れる(気がする)のも、良い感じである。


参考動画(録音前日のライブ)
www.youtube.com


Mary Halvorson の過去記事アーカイブ(旧ブログ)

John Zorn - Sacred Visions

ジョン・ゾーンの作曲家名義の新作を聴く。

Sacred Visions

Sacred Visions

Jane Sheldon,Sarah Brailey, Eliza Bagg, Rachel Calloway, Kirsten Sollek(voices)
JACK Quartet : Chris Otto(vln) Ari Streisfeld(vln) John Pickford Richards(viola) Kevin McFarland(cello)


前半がアカペラ女声五重奏、後半が弦楽四重奏。前半の5人のうち4人は、今年3月に感銘を与えてくれた「Madrigals」(6人)と共通していることもあって、大いに期待して入手した次第。女声コーラスだけでなく、弦楽四重奏も含めてこういう音楽をたまに聴くと、やはりいいもんだ。心が洗われる心地がする。いや、ジャズを聴くと心が汚れるというわけではないですが。

BZ BZ UEU - Tapes & Vinyls

Clean Feed の3枚や Relative Pitch の新譜(どれとは言わぬがイマイチだったので紹介はしない)と一緒に、試聴で興味を覚えて購入。

BZ BZ UEU - Tapes & Vinyls
Music 'A La Coque, 2016)
Efisio Biancofiore(g) Edi Leo(tp) Jacopo Andreini(sax) Carlo Lupori(d) Pino Montecalvo(b)


グループのことは全く知らなかったが、discogs によればイタリアの『アヴァン・パンク・ジャズ・バンド』で、20年以上の活動歴があるらしい。アルバムは90年代に発表したカセットテープやレコードの音源を寄せ集めたものとのこと。サウンドの基本はロックであるが、ところどころフリージャズ風味も漂う。サックスは上手いんだか下手なんだか、ジャズとは違う変てこなアバレ具合で、逆に新鮮な感じ。

LUME - Xabregas 10

引き続き Clean Feed の新作を聴く(まで、今回リリース分は計3枚を購入)。

Xabregas 10

Xabregas 10

Marco Barroso(composition, direction, p) Manuel Luís Cochofel(fl) Jorge Reis(ss) Paulo Gaspar(cl) João Pedro Silva, Ricardo Toscano(as) José Menezes(ts) Elmano Coelho(bs) Sérgio Charrinho, Pedro Monteiro, Gonçalo Marques(tp) Luís Cunha, Eduardo Lála, Mário Vicente(tb) Miguel Amado(elb) André Sousa Machado(ds)


ポルトガルのピアニスト・コンポーザー Marco Barroso が率いる LUME(Lisbon Underground Music Ensemble)の新作。CF からは初登場だが、「L.U.M.E」というデビュー作が3年前に出ているらしい(未聴)。総勢15人(+ゲスト1人)は、トロンボーンの Eduardo Lála を除けば知らない人たちばかりだったが、試聴で引っ掛かって入手した。


展開される音楽は、エレクトロニクスやサウンドコラージュを駆使しつつ、ザッピングのように構築されたコンポジションとアレンジが特色(フランク・ザッパピンク・フロイドからの影響を指摘するインフォメーションもあるが、そちら方面には詳しくないのでよく分からない)のコンテンポラリービッグバンドといった風情で、意気は買いたい。なおアルバムは、最近亡くなったサックスの Jorge Reis に捧げられているとのこと。


試聴
open.spotify.com


ティザー
www.youtube.com

Life and Other Transient Storms

Clean Feed レーベルの新譜を続けて聴く。

Life and Other Transient Storms

Life and Other Transient Storms

Susana Santos Silva(tp, flh) Lotte Anker(ts, ss) Sten Sandell(p) Torbjörn Zetterberg(b) Jon Fält(ds)


これは面白いぞ! 最近注目されているらしいトランペット奏者 Susana Santos Silva(ポルトガル出身)をリーダーに、サックスの Lotte Anker(デンマーク出身)と、いずれもスウェーデン出身の Sten Sandell, Torbjörn Zetterberg, Jon Fält のピアノトリオを迎えた、5人によるライブ盤。女性管楽器と男性ピアノトリオによる男女交歓とも、還暦近いSten & Lotte 組と70年代生まれの Silva, Zetterberg, Fält 組との世代抗争とも受け取れるメンバー構成だが、まあそんなことは考えるだけ野暮な話(おいおい)で、展開されているのは欧州マナーの由緒正しきフリージャズである。Sten と Lotte はさすがベテランの貫録で存在感を示している、などというと先ほど自分で否定した世代抗争の陥穽にはまってしまっているけれど、事実なのだから仕方がない、むろん若手側(という年代でもないので、むしろ中堅組とするのが妥当か)だって気を吐いている。


試聴
open.spotify.com

Cortex - Live in New York

Clean Feed レーベルの新譜が届く。

Live in New York

Live in New York

Thomas Johansson(tp) Kristoffer Alberts(sax) Ola Høyer(b) Gard Nilssen(ds)


Starlite Motel の「AWOSTING FALLS」(4月2日参照)でも活躍していた、サックス奏者クリストファー・アルバーツとドラマーのガルド・ニルセンが参加するノルウェーのグループ、Cortex の新作。同レーベルからは前作「Live!」に続いての2枚目(通算4枚目らしい)で、またしてもライブ。クリストファー・アルバーツのサックスが、ひしゃげたような音のノイズ発生装置と化している場面をはじめ、特異な個性が非常に際立ち、比較的ストレートアヘッドなトランペットとの対比もあって、とても良かった。全3曲35分という収録時間にはやや不満があるものの。


試聴
open.spotify.com

Kita - Kranemann / Spontaneous Compositions

発売直後に買ってちょくちょく聴いてはいたけれど、紹介は延び延びになってしまっていた。

SPONTANEOUS COMPOSITIONS

SPONTANEOUS COMPOSITIONS

北陽一郎(tp, piccolo tp, eltp, tb) Eberhard Kranemann(b, elg, key, ts, electronics, electro rythms, vo) + 野々ユキノ(poem)


北・クラーネマンのアルバムというと、10年近く前に「KITA-KRANEMANN ONE WORLD-ONE SOUND」(07年4月22日参照)を聴いて面白かった記憶があるが、10年ぶりの新作もやはり面白い。全18トラック、2人とも、いろんな楽器を用いて、いろんな組み合わせで、いろんな要素をぶち込んで、いろんな音楽を現前させていく。おもちゃ箱のような、あるいは当て字通りの意味で我楽多箱のようなアルバム。次々に変わる音風景は、しかし聴いているうちに、一連のサーガのように思えてくるから不思議だ。


参考動画
www.youtube.com