あうとわ~ど・ばうんど

Bob Crusoe - Live 2012: Faint Praise

クリス・ピッツィオコスが貴重な音源をデジタルリリースしている。


Bob Crusoe - Live 2012: Faint Praise(2017)
Richard Lenz (g, vo) Chris Pitsiokos (sax, electronics) Nat Flack (ds)


クリスのデビュー作となった「Unplanned Obsolescence [Analog]」の録音よりも6週間前、すなわちクリス「最古」の記録である。しかもこの日、クリスはウィーゼル(とティム・ダール)に初めて出会い、音源はウィーゼルの手によって録音されたという。このあたりの経緯は、JazzTokyo 誌でのインタビューに詳しい。長くなるが引用してみる。

ボブ・クルーソーのツアーでウィーゼル(・ウォルター)と対バンした時に、初めて意を決して彼らのところへ行き、「へい、僕は君たちのような音楽を演奏するんだよ。」「君たちの音楽が気に入ったよ。僕のも観てくれないか?」と話しかけたんです。
ウィーゼルはリハーサルで僕らを観て気に入ってくれたんだと思います。会う前に聴いてくれて。彼がこんな風に言ったのを覚えています。「Yeah、普段は早く会場に来ることはないんだけど、君たちをチェックしに来たんだ。ワアーって感じだね。君らはイイね」。
そして、彼は僕らのライヴを録音して、とても気に入ったようでした。
ライヴの後、僕はウィーゼルとメアドを交換して、後日メールしました。で、いつどうなったのか正確には覚えていませんが、一緒に演奏することになったのです。
強烈な演奏だったので、彼は自分のレーベル「ugExplode」からリリースすることを決めたのです。それが僕が初めてリリースしたレコードで、ウィーゼルと一緒にやった最初の作品『アンプランド・オブソレセンスUnplanned Obsolescence』です。

http://jazztokyo.org/interviews/post-8660/

初めてウィーゼル・ウォルターと共演した時がそうでした。究極的にエキサイティングでエネルギッシュな演奏で、途轍もなくケイオティックでした。ウィーゼルとはそれ以来何度も共演していますが、最初のときは特別でした。まるで昇降機に乗っているように2人の気持ちが上昇したり下降したりして最高の演奏になりました。それが僕の最初のレコードになったのです。
昔のようにハードな演奏はもうやりません。当時はとにかくもっともっとエクストリームに演奏しようとしていましたが、今では飽きてしまいました。

http://jazztokyo.org/interviews/post-21332/

つまり本作は、今の彼がかなぐり捨ててしまった、ウィーゼルとのデビュー作と同じように激しく、バンキッシュな最初期の演奏が聴けるのだ。30分に満たないとはいえ、わずか5年前ながら何ともなつかしい心持がする。彼は今後さらにどのように変わっていくのだろうか? ちなみに、ジャケでは変な体勢で写っているリチャード・レンツのヴォイスは、あまり英語的な感じがしなくて、なぜか日本人がやってるみたいに聴こえて面白い。