あうとわ~ど・ばうんど

藤井郷子 田村夏樹 / 如月

藤井郷子さん(あるいは田村夏樹さん)の数多あるプロジェクトの中で、最も愛するのがやっぱりデュオ演奏。なので、新作が出れば当然入手する。

如月 -KISARAGI - (Libra 102-042)

如月 -KISARAGI - (Libra 102-042)

田村夏樹(tp) 藤井郷子(p)


発売されたのは水無月なのに、タイトルは如月。というのは録音されたのが一昨年の2月(一部は昨年5月)だからで、蓮實重彦(だったかどうか忘れた)が昔、文芸誌は春に大雪の話題が載っていて季節感がない、みたいなことを書いていたなあなどと考えつつ、収録曲のタイトル一覧を眺めてみると、「野分」とか「霧氷」とか季節がバラバラなのであって、たんに四季がテーマということのようだった。それはともかく本作はいつもとは趣が異なっていて、アルバム一枚丸ごと最初から最後まで楽器本来の音を一切に使わずに演奏する、というコンセプトの由。すなわちピアノは内部奏法やら打楽器的用法に終始し、トランペットもズズズズズ~やらビュッギュワッピヨヨヨヨヨーンといった異音を駆使しまくる。のだが、音楽はこの2人ならではの幽趣または游趣に満ちていて、というよりむしろ純化されていて滋味深い。2人は来月下旬、デュオではないけれど3年ぶり(?)に北海道に来ることになっていて、楽しみにしている。