あうとわ~ど・ばうんど

Cecil Taylor - Michigan State University, April 15th 1976

セシル・テイラー・ユニットの貴重な発掘(それとも再発か?)盤が出ている。

Michigan State University April 15th 1976

Michigan State University April 15th 1976

Cecil Taylor(p) Jimmy Lyons(as) David S. Ware(ts) Raphe Malik(tp) Marc Edwards(ds)


何が貴重かといえば、デヴィッド・S・ウェアが参加していた時代のユニットの音源である、ということだ。なにしろ、ウェアがテイラー・ユニットに在籍していたのは、76年初頭から77年6月までの1年半。当初はトロンボーンのジョゼフ・ボウイが参加していたり、ドラマーが後にビーヴァー・ハリスになったりはするが、ウェアを含む3管編成は不動で、ユニットはこの間アメリカやカナダ、ヨーロッパをツアーしている(セッショングラフイーはこちら参照)。

しかし、このメンバーでの録音は、公式には「Dark to Themselves」一枚しかない。さらに、この一枚が名盤の誉れ高いのであるから、他の音源が聴きたくなるのが当然だろう。そこに「Dark To Themselves」の2か月前の本作が登場してくれたのだから、テンションも上がろうというものだ。

このレーベルは『歴史的ラジオ放送音源をCD化するシリーズ』とのことだが、ヒスノイズや音の乱れから推察するに放送元のマスターテープでなくエアチェック音源なのではないかと思うけれど、ウェアの音はかなり大きくとらえられているので無問題だ。1~3曲目は一つの曲で便宜的にトラックナンバーが切られているようだが、1曲目はドラムソロ、2曲目がウェアとセシルのデュオ、3曲目がピアノ・アルト・ドラムのオリジナルトリオによる演奏+マリクとセシルのデュオ、とラジオ放送を念頭に置いたような構成となっている。

やはり2曲目、ウェアとセシルのデュオに耳が引き寄せられる。ウェアはセシルを向こうに回し、黒々としたぶっとい音に情感を乗せてブロウしまくる。かっこいい。「セシル・テイラー・ユニット」に去来した管楽器奏者で、セシルにここまで張り合えたのはやはり彼だけだったのではないかという思いを強くする。4曲目は5人による演奏で、ウェアはここでも自己主張し存在感を発揮しまくる。残念ながら15分足らずでフェードアウトしてしまうが、とにかく、よくぞ出してくれました、の一枚。他の日のライブも聴きたいぞ。発掘が進むことを願う。


試聴(4曲目。こうしてYouTubeに音源があるということは、やはり昔から私家盤として出ていたんだろうか)