あうとわ~ど・ばうんど

明田川荘之 / いそしぎ

アケタさんの新作が届く。

『明田川荘之グループ/いそしぎ』

『明田川荘之グループ/いそしぎ』

明田川荘之(p, ocarina) 吉野弘志(b) 畠山芳幸(b) 楠本卓司(ds) 石田幹雄(p)
アルバムのコンセプトについては、アケタさんが例によってライナーノートに書いているが、ここでは話題としない。知っていても知らなくても、アケタさんのピアノを聴けばその痛切感は常に心に直接響くからだ。
全5曲中、4曲目(「A列車で行こう〜山田線で行こう」)のみ、その夜遊びに来た石田幹雄が参加して、アケタさんはオカリナに専念した演奏が収録されている。石田にとってはアケタズディスク・デビューとなるのだから、われわれにとっても喜ばしいが、アルバムとしてはチェンジオブペース的役割か。
残る曲、冒頭のタイトル曲は、ある意味誰がやっても一定の情趣が担保される曲ではあるものの、アケタさんの粘っこいような独特の哀愁はやはりさすがだ。
2曲目「デイ・スタンド・サムシング」は『ずっとやってなかった曲』だそうだが、私にとっては新曲に等しく、名曲「エアジン・ラプソディー」の変奏のような異母弟のようなメロディーが印象に残る。所々「戦メリ」なんかも思いだしてしまうが(常に何かに似ているの記憶を呼び覚ますのはアケタさんのオリジナルの美点でもある)、アルバム中で最長尺のこの演奏は哀愁の竜巻だ。演奏の局面ごとに私の胸に生起する感情を強烈な力で次々巻き込みながら、心も身も張り裂けろとばかり激しい上昇気流に乗せて高みへ連れ去られる。
3曲目「トワイライト・ウェーヴ・ビフォー・ダーク」と最終曲「福島での若き日々」は抑制の利いたバラード。淡々と見えつつも、徐々に、グイグイと心を鷲掴みにし、しかも、哀切の先に明るい光を展望させるような温かみを感じる。