あうとわ~ど・ばうんど

We Want Miles

マイルス・デイヴィス様、生誕80周年おめでとうございます。(ちなみに、9月28日は没後15周年です)。今から16、7年前の高校時代、あなたの音楽に出遭えて本当によかった。もし出遭えなかったら、そうとうに違う人生を歩んでいたはずです。現在に至る総てを用意してくれたのが、あなたの音楽でした(詳しくは昨年11月11日参照)。
というわけで、「We Want Miles/Miles Davis」。81年、2枚組み全6曲77分。Miles(tp,key)Marcus Miller(b)Bill Evans(ts,ss)Mike Stern(g)Al Foster(ds)Mino Cinelu(per)。
引退から復帰した直後のライヴ選集。①④が10月の東京。②が7月のニューヨーク。③⑤⑥が6月のボストン。東京ライヴのマイルスは肺炎を患っていたせいか弱弱しく、聴くに忍びない(この切ない感じも、また楽しからずや、ではあるが)。それにしても不思議なのは、復帰から一番日の浅いボストン・ライヴが一番マイルスが元気なこと(従来、テオ・マセロが大幅に編集したとされてきたらしいが、近年出たブート(ぼくは持っていませんが)によると、ほぼアルバムどおりの演奏だという)。②「Back Seat Betty」で、ミュートトランペットの第一声が鳴り響いた瞬間、客席からどよめきとも喜びともつかぬ歓声が巻き起こるのも感動的なのだが、個人的にはボストンでの3曲が好きだ。
そのボストンでのライヴには感動的な逸話がある。マイルスファンならば誰でも知っている話なので割愛(もし知らない人がいたら、宝島社文庫「自叙伝Ⅱ」230頁を読んでください)。その出来事が、ボストン・ライヴ4日間のうちレコーディングの日なのかその他の日なのかは不明だが、マイルスのプレイにそうとうに力を与えたとみることは可能だと思う。
③「Fast Track」は疾走感。テオがあまり手を加えていないと言いつつも、関与度はそうとう高そうだ。終盤のサウンドは一体何なんだ?⑤「My Man's Gone Now」は抒情だ。そして、最も好きなのが⑥「Kix」。マイトガイが大昔歌ったオマヌケな曲みたいなテーマに思わず脱力しそうになるが、だまされてはいけない。ジャムセッションふうの展開で、演奏の大半はなななんとフォービートで猛然とスウィングしているではないか。まるで最新型の「Four & More」(マイルスは死ぬまで前進し続けたという伝説があるが、そんなのは狂信者の妄言であって、マイルスはけっこういろんな場面で過去に回帰している)。それにしても、お懐かしフレーズ連発のマイルス、リーブマン・ライクなエヴァンス、ギンギンのスターン、強靭なマーカス・・・うーん、しびれます。
We Want Miles!!!