あうとわ~ど・ばうんど

The Original Ellington Suite

月イチ・ドルフィー。(取り上げるのは月イチですが、聴くのは月イチではありません。為念)
The Original Ellington Suite/Chico Hamilton Quintet with Eric Dolphy」(pacific jazz)。58年(リリースは2000年)、全9曲42分。Dolphy(as,fl,cl)Nate Gershman(cello)John Pisano(g)Hal Gaylor(b)Hamilton(ds)。
ハミルトン・クインテットドルフィー加入後初吹き込み。テストプレスまで作られたが、レーベルオーナーの一声でボツとなり(メンバーを変えて再録音された)、約40年たってからなぜかイギリスのレコード店でテストプレス盤が発掘された(アメリカのレコード会社の管理体制は実にずさんだなあ。スタジオ流出ブートの多さからも裏付けられよう)。ところで、このタイトルだと、メンバーは6人になってしまうのではないでしょうか?
作品中では、ドルフィーがアルトサックスを吹く②④⑦⑨が圧倒的に素晴らしい。②は「In A Sentimental Mood」。ジョニー・ホッジズをしっかり意識したテーマ演奏にやられてしまう。④「Just A-Sittin' and A-Rockin'」はハードバッパー=ドルフィー。⑦「I'm Beginning To See The Light」、パーカーフレーズを基調としながら飛び跳ねる音使いや異化音を駆使する。⑨「It Don't Mean A Thing」は、一番よく知っているドルフィーに最も近い。縦横無尽なフレージングが気持ちいい。
フルートやクラリネットを吹いた他曲はどうしてもイージーリスニング感が拭えないが、アルトを吹いた瞬間、強烈な個性が否応なしに浮き上がる(おそらくそれがボツになった理由。レーベルオーナーはイージーリスニングが作りたかったのだろう。ただし、作品全体はエリントンナンバーの幻想ムード再現にそこそこ成功している。ジョン・ピサノのギターも悪くない)。
58年というと、フリージャズはまだまだかなりアンダーグラウンドな頃で、ドルフィーもまだ主流派寄りだ。とはいえ、感覚に頼ったような音使いや、独特のリズミックアプローチが散見される。ドルフィーの魅力の一つには、理論的整合性の取れた部分といいかげんな部分の絶妙な配合があるが(たぶん誰もあまり指摘しないだろうが、ドルフィータンギングも意外とイイカゲンで、細かい音は結構省略することがある。ただし、フレージングに効果的に生かしている)、それがしっかり感じ取れて嬉しい。