あうとわ~ど・ばうんど

Resident of Earth

新譜から。これは、なかなかイイ。「Resident of Earth/川嶋哲郎 meets 鬼怒無月」。全10曲59分。川嶋(ts,ss,fl)鬼怒(g)。
鬼怒については説明不要だろう。現代最高のギタリストの一人だ。川嶋についてだが、数年前までは、ぼくの視界には入っていなかった。当然、名前は知っていたけれど、ぼくの聴く作品には登場しないタイプのミュージシャンだと思っていた。ところが3年前、キップ・ハンラハンがなぜか川嶋をプロデュースした「Mambo Montage」を聴き、お、案外いいテナーじゃないかと思ったのだった。個人的にはクリス・ポッターより魅力的、と言ったら、ジャズマフィアの方々に滅多刺しにされるだろうか?(とはいえ、その後リーダー作を買う気にはならなかった。そのためには、何かがもう少し足りない気がする。この作品を聴いたのも、鬼怒が目当てだ)
さて、演奏だが、川嶋が縦横無尽なソロを取り、鬼怒はなんとも情趣豊かなソロを紡ぐ。極論すると、全曲そういうパターン。最初聴いたときは川嶋中心のセッションとはいえ、鬼怒が大人しすぎるのではないか、と多少不満だったが、繰り返し聴くうち、これでいいのだと思えた。鬼怒が手数で応戦していたら、スポーティーな快感はあっても、このような深い味わいは生まれなかっただろう。それに、このセッションの雰囲気を支配しているのは、紛れもなく鬼怒のギターだ。曲単位では、①「ショパンのプレリュード第20番」、日野元彦の名曲②「流氷」、鬼怒作⑦「Blessles」、川嶋作⑧「Tango Triste」がとりわけ印象に残った。