あうとわ~ど・ばうんど

ALP

このアルバムも、時折思い出したように聴きたくなる。「アルプ/明田川荘之」(93年、全3曲63分)。
本当は、このアルバムが、というよりも、最終曲「Magic Eye」が聴きたくなると言ったほうが正しい。この曲における、旧型サンプリング・シンセのチープなバックストリングスとヴィブラフォンのような音、そしてレトロなテーマメロディーが、なぜだか自分の琴線に触れてしまうのである。
演奏は、良く言えば非常にリラックスムード、悪く言えばユルユルな雰囲気(後半のフォーヴァースで、「分かんなくなっちゃった」と言っているアケタの声が聴こえる)で、30分近く続いていく。自分には、このユルイ感じが曲想にマッチして、とても心地よい。緊張感があっても必ずしもいい演奏になるとは限らないジャズっていう音楽は実に複雑怪奇で面白いと思う。
それにしても、ここでベースを弾く山元恭介、別の曲でトロンボーンを吹く板谷博が、物故者になっていることに気付くと、曲調と相俟って、何だか無常を感じてしまうなあ。