あうとわ~ど・ばうんど

To Whom A Melody Belongs?

珍盤ついでということでもないが、「うたは誰のものか?/泉邦宏立花泰彦」(02年)。全9曲70分。泉(as,ss,笛,大声,per,etc)立花(b)+沖至(tp)関根真理(per)。
2曲を除いて、泉と立花のデュオ。バラード主体。①「Georgia on My Mind」②「Memories of You」③「Deep River」、立花の堅実なサポートを得て、泉のアルトが朗々とメロディーを紡ぐ。④「バラード・フォー・マチェック」は、泉が笛に持ち替える。幽玄な感じ。⑤「チャルメラ」、泉がアルトで、『ドレミーレド、ドレミレドレー』というアレを、バラードに昇華させている。大好き。
沖と関根が加わり、(たぶん)フリー・インプロの⑥「うたは誰のものか?」。隙間だらけで枯れたように見えてその実強靭な沖のトランペットと、ジョン・ゾーン梅津和時系の硬質で太い音色で空間を埋め尽くそうとする泉のサックスとの対比が面白い。⑦「Blue Monk」も4人による演奏。⑧を飛ばして、⑨「At Last I am Free」。泉アルトが劇的に締める(余談だが、この曲は、泉も参加していた「渋さ道/渋さ知らズ」(93年)で演奏されていた。元々渋さが取り上げるきっかけになったのは、渋さ草創期のメンバーの一人で、「渋さ道」録音直前に亡くなった篠田昌已への追悼。その篠田の演奏は「カシーバー・ライブ・イン・トーキョー」(97年)というアルバムに残されている。ただ、なぜか大友良英がリミックスしていて、篠田がフリーキーなアルトを吹いているトラックをバックに、当時グラウンドゼロのメンバーだった菊地成孔のテナーが吼える。これこそ本当の珍盤だろう)。
ところで、この作品、2001年9月11日録音というのは本当だろうか? 出来すぎに思えてしまう。それにしても、泉には「馬鹿が牛車でやってくる」みたいなものでなく、衝撃のデビュー作だった「Sunrise in My Head」や本作みたいな硬派なアルバムをもっと作ってほしいなあ。