あうとわ~ど・ばうんど

Paris Blues

昨日のデューク・エリントンは、名オーケストラリーダーにして名ピアニストという表現がピッタリ来るけれど、ギル・エヴァンスの場合、名オーケストラリーダーではあるが、ピアニストとしての影が薄い。しかし、間違いなく素晴らしいピアニストであったことを証明するのが「Paris Blues/Gil Evans Steve Lacy」だ。88年、全7曲60分。
ギルとレイシーのデュオ。レイシーのソプラノは、意外にも極めてストレートにメロディーを吹き、またオーソドックスと言ってもいいようなソロを取る。ギルは4曲でアコースティックピアノを、3曲でエレピを使用。自在性に富んだ不可思議なバッキングやソロを聴かせる。とりわけ、ギルが愛してやまなかったというミンガス作品の3曲が素晴らしい(他に、タイトル曲はエリントン作、ギル作が1曲、レイシー作の曲が2テイク)。
①「Reincarnation of a Lovebird」でのエレピの何ともいえぬ浮遊感、④「Orange was the Color of her Dress the blue Silk」でのアコースティックピアノによるシンプルな美しさ、⑤「Goodbye Pork-Pie Hat」も一聴しただけで涙腺が緩みそうなエレピサウンドを醸し出す。ギル・エヴァンス、当時76歳。死の4ヶ月前の白鳥の歌である。