あうとわ~ど・ばうんど

Kele Mou Bana

Don Pullenがこの世を去って、早いもので10年以上が経つ。プーレンには一時期、心底ハマッたなぁ。というか、今でも好きなのだが。手元のプーレンがらみのアルバムを数えてみたら、40枚近くあった。ドルフィーがらみより多いかもしれない(活動期間を考えると当たり前かもしれないが)。
プーレンというと、そこら辺のジャズファンにとっては、陽気と哀感の入り混じった、拳でぴゃらぴゃら弾く人というイメージが強いと思うが、この人ほど間口の広い音楽性を持ったピアニストはそういない。というのが個人的な感想である。プロとして最初の仕事はR&Bバンド、メシオ・パーカーとの吹き込みも残している。そしてジャズ界には当初、過激なフリーピアニストとして出現した(80年代にもBlack Saintにフリー系作品がある)。70年代にはアート・ブレイキーと共演(ジャズ・メッセンジャーズとしてかどうかは未確認。詳しい人教えて)、ミンガスバンドを経て、ジョージ・アダムスと名高き双頭カルテットを結成することになる。キャリア晩年のキップ・ハンラハンとのコラボレーションも忘れることはできない。
確か…自分が一番最初に聴いたのはDavid Murrayの「Shakill's Warrior」でのオルガン・プレイだった。「Song from the Old Country」「In the Spirit」「At the Cafe Central」「Milano Strut」といったプーレン作の名曲たちが光るアルバムで、一発で気に入った。ホント、飽きるぐらい繰り返し聴いたものだ。その次に買ったのが、この「Kele Mou Bana/Don Pullen & the African-Brazilian Connection」(92年、blue note)だったと思う。Pullen(p)Carlos Word(as)Nilson Matta(b)Guiherme Franco(timba,berimbau,per)Mor Thiam(diembe,tabula,rainsticks,wind chimes,vo)Keith Pullen,Tameka Pullen(vo)。全7曲56分。
このアルバムは、プーレンのキャリアの中では特に代表作とか傑作というわけではないけれど、いつ聴いても胸躍る楽しさにあふれている。今でも自分の夏の定番車内アルバムで、冬でも晴れた日にはついついこのアルバムに手が伸びる。個人的には2曲目の「Listen to the People(Bonnie's BossaNova)」が大好きだ。軽快な、でも深く、そして哀愁たっぷりのプーレン節が炸裂する。この人のピアノは本当に上手い。というより、美味しいというべきか。たまらんのだ。他にもリズミカルな1曲目「Capoeira」や、ファスト・テンポでメンバーが弾ける4曲目「L.V.M./Directo Ad Assunto」が楽しい。