あうとわ~ど・ばうんど

Round Trip

意外に思われるかもしれないが、渡辺貞夫のアルバムを持っている。といっても、2枚だが。昔は10枚以上持っていた。「I'm Old Fashioned」や「Bird of Paradise」にハマっていた時期もあるし、初リーダー作「渡辺貞夫」の「Now's The Time」でソロがウラ返っているのを聴いて親近感を深めたことだってある。でも、その後どんどん手放してしまい、残ったのが「Round Trip」と「Swiss Air」だ。
2枚のうちでは、前者が好きだ。全4曲44分、渡辺貞夫(sopranino,fl)Chick Corea(p,elp)Miroslav Vitous(b)Jack DeJohnette(ds)etc。1970年7月15日というから、チックとデジョネットはマイルス・バンド在籍中。前月に「Miles at Fillmore」、翌月にはワイト島フェス出演という歴史的名演の狭間で吹き込まれたことになる。余談だが、チックはこの年の秋マイルス・バンドを脱退し、サークルを結成することになる。
というわけで、このアルバム、とっても高密度なインプロが繰り広げられており、フリージャズと呼んで差し支えないと思う。白眉は、やはり20分にも及ぶ標題曲で、ナベサダのソプラニーノは、現在の姿から想像つかないほど攻撃的で、曲頭の一音目から圧倒される。リズム・セクションもこれでもかこれでもかの応酬合戦。ちなみに、ナベサダは事前にメンバーを選んだとき、まさかこんなサウンドになるとはまったく思っていなかったらしい。それが名演になるのだから、ジャズは面白い。
Sonyは、こういう作品こそ、きちんとDSDマスタリングで再発すべきだろう。