あうとわ~ど・ばうんど

Lennie Tristano

今や、CDは大半をネットで購入するようになってしまったが、本来なら、CD屋に出かけていって買いたいものだ、と思う。特に目的もなくぶらりと寄ってみて、思ってもみなかった作品にぶつかる、あるいは今まで知らなかったけれどとても面白そうな作品を発見する、というのが理想だ。
しかし現実には、自分の住む地方都市のCD屋に出かけていっても、地方の品揃えが悪くなってきているからなのか、自分の趣味が硬直化してきているからなのか(恐らく両方だろうが)、結局失望感を確認するだけなのが悲しい。学生時代、なんとなく大学をサボり、でも目的も金もなく、時間つぶしに入ったCD屋で何時間もかけてAの棚から順に1枚1枚見てゆき、最後は財布の中身を見つめて嘆息した日々が、今となっては涙が出るほど懐かしい。

それでも悲しき習い性というか、週に1度くらいはやっぱり失望しに出かけてしまう。すると最近は、実際にどのくらいの需要があるのか知らないが、1500円とか1800円の、いわゆる名盤の廉価盤コーナーがあって、そこから「興味があったけど今までずっと聴かずに過ごしてきてしまった」作品を、1枚2枚引き抜いて買ってきてしまうことが多い。

というわけで、そんなふうに昨日買ったのが、Lennie Tristanoの「Tristano」(なぜ邦題は「鬼才」なのだろう)で、前半のピアノに焦点を当てたトラックが面白かった。特に3曲目の「Turkish Mambo」。どこらへんがトルコ風で、どこがマンボなのだか、凡人の耳にはまったくわからないのだけれど、(たぶん)二人のトリスターノが微妙にリズムのズレた和音を叩きつけながら(トリスターノのピアノはけっこうパーカッシヴだ)、もう一人のトリスターノがフレーズをつむいでいくという構成で、この妙な感じが気に入った。