あうとわ~ど・ばうんど

Chico Hamilton & Eric Dolphy / Complete Studio Recordings

こんなCDが出ていたとは知らなかった。

COMPLETE STUDIO RECORD

COMPLETE STUDIO RECORD

Chico Hamilton(ds) Eric Dolphy(as, bcl, fl) etc.


エリック・ドルフィーのニューヨーク進出前夜、初めて一般的なパブリシティを獲得したチコ・ハミルトン・クインテット時代(1958~59年)の公式スタジオレコーディングを集成した約220分に及ぶ3枚組。2000年に発掘された「オリジナル・エリントン組曲」から始まり、「スリー・フェイセズ・オブ・チコ」「ウィズ・ストリングス・アタッチド」「That Hamilton Man」「ゴングス・イースト」の全5作品(録音順)に加え、最後にボーナストラックとして、有名な58年のニューポートにおけるライブの6曲が収録されているという至れり尽くせりぶりで、2千数百円とは安い。

ドルフィーのハミルトンクインテット時代を初めて通しで聴いてみたことになったが、巷間云われているようにはドルフィーがグループのサウンドに合っていないとは思われない。彼は地元では名の通ったセッションミュージシャンであったはずで、公の仕事と自分の嗜好をしっかり切り分け、彼に与えられた役割をそつなくこなしつつ、しかし自分の個性をしっかり紛れ込ませている。そしてそれはハミルトンも許していたにちがいないということであって(私はむしろ好んでいたのではないかと思っているのだが)、この時期はドルフィーの個性が確立していないだの何だの評論家めいた空論を述べる必要はなくて、サウンドに溶け込みつつ許される限りのトライをする、というのが当時の彼の仕事だった、ということだと思う。なおこの時期のクインテットは『ドルフィー映え』するようなオドロオドロしいムードの曲が多いような気がするが、それが後年のドルフィーの作曲にも影響を与えたと考えるのは的外れであろうか。


ちなみにハミルトン・クインテットにおけるドルフィーの後任はチャールス・ロイド(しかも初期はアルト)であって、ロイドが去った後には渡辺貞夫も去来することになるのが時代の妙である。