あうとわ~ど・ばうんど

Jon Irabagon - Inaction is An Action

ジョン・イラバゴンの新譜を聴く。

Inaction Is an Action

Inaction Is an Action

Jon Irabagon(sopranino)


イラバゴンのリーダー作を聴くのはずいぶん久しぶりである。というのは、相変わらず私の偏った馬鹿耳のせいだと思うが、凄いのは認めるけれど、どうも彼の音色(特にテナー)と相性が合わず、サイド作品を除いて彼の音楽を積極的に聴いてこなかったためで、しかし、無伴奏サックスソロで田中啓文さんも太鼓判を押しているとあれば聴いてみない理由はないというわけだ。

ちなみにイラバゴンは、今や何かの冗談か間違いだったとしか思えないのだけれど、2008年のモンクコンペ優勝者という経歴を持っていて、ストレートアヘッドなジャズも非常に上手く、デイヴ・ダグラスのグループなどではそういった演奏もしているが、面白いと思ったことがない。私が彼の演奏を初めて聴いたのも、モンクコンペの副賞で制作された、何と Concord からの初アルバム「Observer」で、それが非常につまらなかったという最悪の第一印象も影響しているかもしれない。

とはいえ、この作品は非常に感心した。例えば通常奏法による異化音や管体を極力鳴らさないようにした音をはじめ、おそらくはマウスピースを外してトランペットのように、あるいは尺八のように音を鳴らしたもの(しかもそれらの楽器における超絶技巧奏法を使っていると思われる)、何をどうやっているのかさっぱり分からない音などなど、全8曲それぞれ違った切り口で多種多様の音を使い分けたインプロヴィゼーション(変てこな音の隙間からメロディーが浮かび上がってくるようなものも含めて)に、最後まで飽きることなく深く聴き入った。

しかし、通常ならとっても驚くべき演奏なのだが、こないだの野乃子ちゃんのソロが超傑作だったおかげで、衝撃が薄れてしまったように感じられてしまうのが、私にとってはちょっと勿体ない。だけどイラバゴンに対しては、見直しました。