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Takase, Schlippenbach - So Long, Eric!

So Long, Eric!

So Long, Eric!

Aki Takase(p, arr) Alexander von Schlippenbach(p, arr) Karl Berger(vib) Rudi Mahall(bcl, cl) Tobias Delius(ts) Henrik Walsdorff(as) Axel Dörner(tp) Nils Wogram(tb) Wilbert de Joode(b) Antonio Borghini(b) Han Bennink(ds) Heinrich Köbberling(ds)


エリック・ドルフィー没後50周年の今年、最期の地ベルリンで6月19、20日(くしくも生誕86周年の日でもある)に行われたトリビュートコンサートのアルバム化。芸術監督にアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ、音楽監督に高瀬アキドルフィーと共演経験のあるハン・ベニンクとカール・ベルガー、ドルフィーの衣鉢を継いでいるというべき現代最高のクラリネット奏者の一人ルディ・マハール、ほかにアクセル・ドナーなどが参加した12人編成のラージアンサンブルグループで、ドルフィー作品を演奏している。

なぜこんな大きな編成が必要だったかの疑問はさておき、ドルフィーを使って御商売というふうは全くなく、しっかり尊崇が感じられる演奏になっている。惜しむらくは、ミシャ・メンゲルベルクの健康状態が良くないらしく、不参加(元気だったらきっと出演したに違いない)だったこと。細かな演奏内容に関しては、ドルフィーというと私はどうしても原理(原曲)主義者になってしまうこともあって、ドルフィーが乗り移ったかのようなマハールや、名盤「Last Date」の共演者ベニンク、時おりミシャを思わせる高瀬アキドルフィーの元を去来したトランペット奏者たちもかくやというべきドナー、を除けば点数が辛くなってしまうのは仕方がない。

それよりもアルバムを通じて最も感じたのは、さまざまなアレンジにかかわらず浮かび上がるドルフィーのオリジナル曲が持つ「強度」であって、エリントンやモンク、あるいは近年ではショーターら偉大なスタイリストたちと同様、常に新しき古典として、彼の曲が使われ続けることを願わずにいられないのである。