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Andrew Hill / Les Trinitaires

アンドリュー・ヒル探訪シリーズ。

Les Trinitaires

Les Trinitaires

Andrew Hill(p)
私がアンドリュー・ヒルのピアノに開眼したのは彼の死後、「Time Lines」を聴いてからなので、遅すぎたファンなのだが、こうして、多くの未聴CDを思い出しては入手して聴いていくことができる愉しみがあるのは、せめてもの慰めである。
現在ではブルーノートデビュー時まで遡ってどの時期もすばらしいことは知っているものの、やはり晩年の彼の演奏を最も愛している。本盤は二度目のブルーノート専属を離れ、公式盤リリースの期間がややあいた後、晩年の始まりに位置づけられるピアノソロ。晩年の名曲「Dusk」も2ヴァージョン収録されている。
共演者と対置されたハーモニー・リズム・タイミング感覚のズレを愉しむことは当然できないが、独特のピアノの響きを心行くまで堪能できる点で好盤と思う。彼のピアノは常にまろやかに尖っている、というと変な言い方だが、深く静かで内省的ながら非常に温みのある演奏が愛おしい。


なお、しつこく書く。本盤とは関係ないが、ヒルの死の3週間前の演奏は、最後の録音という事実を離れても大変な名演なので、最後の所属先であったブルーノートにはぜひとも公式盤をリリースしてほしいのだが。