あうとわ~ど・ばうんど

Blues and the Abstract Truth

どうやら、このアルバムを当ブログで取り上げるのは初である。われながら意外。

ブルースの真実

ブルースの真実

本作は、何よりもエリック・ドルフィーを聴くためだけに存在している、といって過言でない。ドルフィーが参加していなかったとしたら、オリヴァー・ネルソンの代表作には違いないかもしれないが、ジャズ史に名を刻むことはなかっただろう。なにしろ、ネルソン自体のサックスは、ゴルソンハーモニーにおけるベニー・ゴルソン自体のサックスと同様、あまり大したことはない(笑)。

本作の白眉は何と言っても、4曲目「Yearnin'」にトドメを刺す。ビル・エヴァンスによる端正なブルースソロからテーマアンサンブルを経て、ドルフィーの素っ頓狂なアルトサックスが轟く。この瞬間、何度聴いても素晴らしい。笑ってしまう。こうした笑いも、ドルフィーを聴く正当な楽しみである。むろんその後に続くドルフィーのソロもまた良いのだが、初っ端のインパクトがやはり凄まじい。しかも、1曲目の「Stolen Moments」から、それなりの雰囲気を醸しだしながら展開してきてさあ充実の中盤、レコードならば盤をひっくり返すと突然こうなるのだから、演出としても心憎い。5、6曲目もまたドルフィーのアルトサックスの異物感が炸裂して見事。

この「Yearnin'」におけるドルフィーのソロには、学生時代かなり影響を受けた。周囲はかなり迷惑だったに違いなかろうが(苦笑)。