あうとわ~ど・ばうんど

神聖喜劇

音楽以外の話を。
神聖喜劇〈第6巻〉漫画版「神聖喜劇」が完結を迎えた。昨年、戦後文学の金字塔というべき大西巨人の大著が漫画化されると聞いたときは不安に思っていたのだが、現在は、原作内容を的確に取捨選択、噛み砕いた上でしっかり描いてくれた、と思っている。
特に第二巻に収められた、日本国家の責任不存在を鋭く突く「責任阻却の論理」や、戦争の目的が『殺して分捕る』ことだと大前田軍曹が長広舌をふるう「隼人の名に負ふ夜声」の各話は、漫画ならではのきわめて印象的な演出がなされている。
もちろん原作の素晴らしさには遥かに及ばないものの、漫画版でもいい、虚ろな目をした首相が戦前回帰を目論んでいる(としか思えない)ような時代だからこそ、いろんな人に読んでもらいたい作品である。なんて、分不相応なことを考えてみたりして。