あうとわ~ど・ばうんど

Intermission

マイルスの自叙伝には魅力的なエピソードが満載だが、こんな話がある。


コルトレーンサウンドは彼の歯が抜けているからだと、マイルスは思っていた。で、トレーンが歯医者に行くと言い出し、マイルスは慌てて無理矢理リハーサルを入れて妨害しようとしたが彼は聞き入れなかった。マイルスがどんな歯を入れるのかと訊くと、彼は「固定するヤツだ」と言う。マイルスは、演奏のときに取り外せるようにしろと説得したが、無駄だった。トレーンが歯医者に行った夜のステージ、マイルスは最初のソロを吹き終え、彼の吹き始めるのを待っていた。もう前のようには吹けない。マイルスはほとんど涙ぐんでいた。だが彼はいつものように吹きまくった。『ステージの上には、トランペットを持った馬鹿野郎が胸をなでおろして立っていたってわけだ(自叙伝Ⅱ・宝島社文庫版13頁)』


実に微笑ましいエピソードである。マイルスは歯医者の息子だというのに(笑)