あうとわ~ど・ばうんど

Filles de Kilimanjaro

Filles De Kilimanjaroなんとなく、久々に「Filles De KilimanjaroMiles Davis」(sony)を聴く。68年、全5曲56分。Miles(tp)Wayne Shorter(ts)Herbie Hancock(p,elp②③④)Ron Carter(b②③④)Tony Williams(ds)Chick Corea(p,elp①⑤)Dave Holland(b①⑤)Gil Evans(arr)。
アコースティックからエレクトリックへの端境期の作品。やっぱり聴き物は、①⑤の2曲だろう。②③④の3曲は、黄金クインテットをエレクトリック化しただけのような感じで、①⑤のような『黒い』ノリが希薄だ(余談だが、牧歌的なタイトル曲④は、なるほどテーマリフをあれこれ変形すると、榎本秀一の「セレンゲティ」になりそうである。1月8日参照)。
①⑤のメンバーはマイルス、ショーター、チック、ホランド、トニー。トニーがデジョネットに替わるとロストクインテットになるが、昨今はブート事情が絡んで、むしろトニー在籍のほうが『ロストクインテット』の名にふさわしくなってきた観がある。さて、その演奏だが、前述したように黄金クインテットよりも『黒い』ノリが濃厚になる。それを持ち込んだのは、ホランドのベースだ。
ところで、これは強調されてもいいことだと思うが、マイルスは69年のエポックへ向けて黒さへ回帰しリズム実験を推し進めていくわけだが、その端緒としてチック、ホランドという2人の白人ミュージシャンを雇った点が興味深い。実際「Seven Steps to Heaven」などの一時期を除いて、ビル・エヴァンス以来10年ぶりの白人レギュラーなのである。特にホランドは英国人であり(後のマイルスバンドに画期をもたらすマクラフリンも英国人だし、ザヴィヌルやキースも白人だし)、当時JBやジミヘンやスライにハマッていたというマイルス自身の言葉とは裏腹に、なかなか面白い現象のような気がするのだが。