あうとわ~ど・ばうんど

The Blanton-Webster Band

不幸なことに(というか、ただ怠惰なだけなのだが)いつか聴こうと思って買ったのに、いつまで経っても聴かないCDがたまに存在する。大概は枚数(収録時間)が多すぎて、できるならまとめて聴きたいのだが、うまく時間が取れない或いは時間はあるのだが集中力が続くかどうか不安だ(初めて聴く作品は『ながら』聴きしたくない。というか、ぼくは、初めてでなくてもそんな器用なことはできないのだが)、みたいな理由でずるずると手付かずになってしまっているのだ。
今日は、なんとなく集中力もありそうだ。よしこうなったら懸案のあの作品が聴けそうだ、と一念発起した。前置きが長くなってしまったが、そこで取り出したのが「The Blanton-Webster Band/Duke Ellington」だ。3枚組、全75曲236分(03年リリースの国内盤。以前は66曲だったそうな)。


つーわけで、スタートボタンを押して



あれ、もう4時間?という感じ。避けていた自分が恥ずかしくなるくらい、簡単に時間が過ぎた。耳を奪われ通しだった。そりゃそうだろう。なにしろデュークを筆頭に、クーティー・ウィリアムス(tp)レックス・スチュワート(cor)バーニー・ビガード(cl)ジョニー・ホッジズ(as)ベン・ウェブスター(ts)ハリー・カーネイ(bs)ジミー・ブラントン(b)ビリー・ストレイホーン(p,作編曲)とキラ星のごとき名手たちが一堂に会しているのだから。特に上記のサックス3人は最高だ。
(ちなみに、自分はフリーとか新しいジャズを追いかけてはいるが、それ以外のジャズも(たとえプレモダンであろうと)あまり買わないというだけで(収拾つかなくなりそうで)、決して嫌いではないのです。ただ、ヴォーカルは苦手だけれど)。
エリントンの魅力は、ぼくにとってはやっぱり、優美にして不穏。これに尽きる。具体的には「Ko-Ko」(1-③,2-⑳)「Warm Valley」(1-25;丸数字がない…)「Blue Serge」(2-⑩)「Chelsea Bridge」(3-⑬)「Moon Mist」(3-⑯)「Sentimental Lady(I Didn't Know About You)」(3-24)などなどだ。たとえて言えば、古井由吉の小説「杳子」の美しさとでも言おうか(特に、ホッジズのアルトの音色はそれを喚起させる危うげな美しさが充溢する)。
もちろん他にも、「Conga Brava」(1-⑥)「Bakiff」(2-⑫)などのゾクゾクするようなエキゾチシズム。ウェブスターが、すんばらしいソロを取る「Cotton Tail」(1-⑨)の爆発的スウィング感など聴き所満載。
いやはや、やっぱすごいや。