あうとわ~ど・ばうんど

Folkloriko

一昨年話題になった(らしい)Susie Ibarraの「Folkloriko」(tzadik)を聴く。全10曲47分。Ibarra(ds,per)Jennifer Choi(vln)Craig Taborn(p)+Roberto Rodriguez(per)Wadada Leo Smith(tp)。
イバーラは、デヴィッドSウェア・カルテットに在籍したこともある、強力な女性ドラム・パーカッション奏者。アルバムは、イバーラの民族的ルーツであるフィリピンの民話をモチーフにした、ロドリゲスとのパーカス・デュオ「Anitos」と、『フィリピン移民労働者の一日』をテーマにした組曲「Lakbay」の2部構成。
38分近い「Lakbay」が面白い。イバーラのパーカッションが、フィリピン的感性を表現しているのかどうか、知識がないので分からないが、東洋系と思しき(中国系か)ジェニファーの民族弦楽器のようなヴァイオリンと相俟って、大まかにアジア的情緒を感じさせはする。しかし、白人系であるテイボーンのピアノ、3曲で印象的なトランペットを聴かせる黒人系のスミスの参加によって、むしろ人種混淆の国アメリカを象徴するような無国籍音楽の響きが漂っている。演奏は知的緊迫感に満ちていながらも、包容力豊かで非常に滋味溢れる。