あうとわ~ど・ばうんど

Inner Man

Eric DolphyJohn Coltraneの共演盤は、あまり好きでない。もちろん、コルトレーンが嫌いなわけではない(むしろ好きだ。特に晩年は大好きだ)。ただ、二人の共演と言っても、結局コルトレーンのグループで、主役はコルトレーンなのだし、音楽性もコルトレーン色が濃く、ドルフィーの白熱のアドリブも曲の彩りのようにしか感じられないからだ(ちなみに、同様の理由で、ドルフィーとミンガスの共演盤もあまり好きでない)。第一、二人はあまりかみ合ってないように感じるが、どうだろうか?
大体、二人の共演のパターンといえば(かっこの中は個人的な感想です。コルトレーンフリークの人は怒らないでくださいね)、テーマ→コルトレーン(長いなあ、まだ終わらないのか)→ドルフィー(おお来た来た、あれっ短いな〜)→マッコイ(タッチが全部同じに聞こえる。やったら長いな〜)→再びコルトレーン(まだ吹き足りないのか)→テーマ、というのが多い。ドルフィーファンの側には、こんなに不満の募ることはない。
だからといって、まったく聴かないわけでもない。そのあまり好きではない共演の中で、よく聴くアルバムが「Inner Man」で、3曲目「Mr.P.C.」ただ1曲にトドメを刺す。(ちなみに、4曲目「Miles' Mode」はドルフィーが書いたという説があるが、真偽は分からない)
1962年2月9日、ドルフィーコルトレーングループにいた最後のころ、バードランドでの演奏。エア・チェック音源とのことで、音質はよくないが、そんなことは気にならない(というか、それが逆にいいのだ。後述する)。おなじみのテーマの後、コルトレーンのテナーソロ。水牛がのたうちまわっているような感じ。そして2分すぎ、水牛の脇から突然、黒豹が飛び出す。ドルフィーだ。この瞬間。いつ聴いても、何度聴いても痺れる。これ、たぶん普通にソロを交代しただけなのだろうけど、まるでドルフィーが割り込んだというか、もぎ取ったような印象を受ける。最高だ。
その後も最高だ。ドルフィーのアルトによるアドリブは常軌を逸しているし、特筆すべきはその音だ。コルトレーンの音よりふた回りはデカイ。さきほど音質がよくないと書いたが、この低音質の中、ドルフィーの音だけがそそり立っている(余談だが、渡辺貞夫アメリカ留学時代、ドルフィーとセッションしたことがあるという。とにかく音がデカくてビックリしたらしい)。演奏はその後、マッコイのソロ、コルトレーンとエルビンの掛け合いを経てテーマに戻るが、いつもドルフィーのソロが終わるとストップボタンを押してしまう。CDは便利だなあ。