Reid / Kitamura / Bynum / Morris - Geometry of Caves
Reid Kitamura Bynum Morris / Geometry of Caves
(Relative Pitch Records, 2018)
Kyoko Kitamura (voice) Joe Morris (g) Tomeka Reid (cello) Taylor Ho Bynum (cor, piccolo & bass tp)
チェロがトメカ・リード、ヴォイスが北村京子、トランペットがテイラー・ホ・バイナム、と来れば、ギターは当然メ・・と思いきや、ジョー・モリスであるところがこのカルテットのミソだろう。各楽器と声が、それぞれ楽音と噪音の性質を同時に併せ持ったような音で、ひっきりなしに親し気におしゃべりしてるようなイメージか。『洞窟の幾何学』というタイトルにはピンとこないが、「洞窟感」は何となく感じられる(?)。ところでこの手のスキャットヴォイスにはありがちなのだけれど、北村さんのヴォイスが時々「テケリ・リ、テケリ・リ」と言っているように聴こえてしまう。
別冊 ele-king 発売 『変容するニューヨーク、ジャズの自由』
Twitter では事前告知していた「別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲」が正式発売されました。後半の小特集『変容するニューヨーク、ジャズの自由(フリー)』に少し参加しました。具体的には、音楽ライター細田成嗣さんが中心となって Sightsong さん、id:zu-ja さんとともに「NYジャズ人脈図」の作成と、「NYジャズ・ディスク・ガイド30枚」の選定および執筆に関わっています。
他の記事も読みごたえがあって、ニューヨークのフリージャズの網羅的現況や影響的背景などに関する論考が、紙媒体として初めてまとめられた“偉業”ではないかと思います。なおディスク・ガイドでは、メアリー・ハルヴァーソンやアンソニー・ブラクストン、ピーター・エヴァンス、マット・ミッチェル、ペットボトル・ニンゲンなど8枚を担当させていただきました。興味のある方は(できれば、ない人も)ぜひ手に取ってみてください。
別冊ele-king カマシ・ワシントン / UKジャズの逆襲 (ele-king books)
- 作者: 野田努,小川充,細田成嗣
- 出版社/メーカー: Pヴァイン
- 発売日: 2018/05/30
- メディア: ムック
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参考
別冊ele-kingのジャズ特集号が発売されました。小特集「変容するニューヨーク、ジャズの自由」では「全面協力」したものの、書き手としての欲は抑え、あくまでもクオリティだけを考えて、テーマ設定と寄稿依頼者の提言を行いました。結果的に想像以上に濃い内容になりました。https://t.co/BHqhQTk0Te
— 細田成嗣 (@HosodaNarushi) May 30, 2018
NY在住のピアニストの蓮見令麻、「タダマス」の多田雅範と益子博之、AMFキュレーター/ターンテーブル奏者のdj sniff、『ジャズという何か』の原雅明、「耳の枠はずし」の福島恵一、『地下音楽への招待』の剛田武、『JazzTokyo』主幹の悠雅彦(以上敬称略)という、他に類を見ない豪華な顔ぶれです。
— 細田成嗣 (@HosodaNarushi) May 30, 2018
この特集を手がけていくうちに、それまで漠然と共通認識だと思っていたNYの先鋭的なジャズ・シーンに対する理解が、あくまでも私自身の捉え方に過ぎないということにも気づかされました。本特集には執筆者の数だけシーンの異なる見方がある――この複数の視座もまた一つの読みどころになっています。
— 細田成嗣 (@HosodaNarushi) May 30, 2018
「この人はあの人と近い」「いやルーツはこっちのはず」「やってる音楽の内容的にはあっちに分類した方が良い」みたいなやり取りを延々と続けて「人脈図」を纏めたんですが、結果としたかなり面白いものができたと思います。これをきっかけに、超面白いNYのジャズについての語りが広がれば良いなと。
— zu-ja (@rifuzuja) 2018年5月28日
Kristo Rodzevski / The Rabbit and the Fallen Sycamore
メアリー・ハルヴァーソンをはじめとするジャズミュージシャンが参加したアルバムをリリースしているヴォーカリスト、Kristo Rodzevski の新作が出ていた。メアリーは今作にも参加している。
Kristo Rodzevski / The Rabbit and the Fallen Sycamore
(Much Prefer Records, 2018)
Kristo Rodzevski (vo), Mary Halvorson (g), Tomas Fujiwara (ds), Michael Blanco (b), Kris Davis (p), Ingrid Laubrock (sax), Brian Drye (tb)
「Batania」(15年10月23日)、「Bitter Almonds」(昨年2月4日参照)に続く第3弾(3部作の3枚目、という位置づけらしい)。前2作はボサノバなのか、フォークなのか、ジャズといえるのか、ジャズ以外の音楽には屯と造詣がない自分にはカテゴライズ不能(する必要はないのかもしれない)な音楽だったが、本作もロックなのか、フォークなのか、フュージョンなのか、やっぱり不分明ながらも、懐かしくも美しく、心地よく気持ち悪い、妙てけれんな魅力のある音楽となっている。
本作ではピアノにクリス・デイヴィス、サックスにイングリッド・ラブロックを新たに迎えるなど、相変わらずの豪華布陣をそろえ、加えてタイトル曲のミックスはビル・ラズウェル、カバーデザインはイクエ・モリが担当するというゴージャスっぷりだ。(なおプロデュースはクリスト自身とトマ・フジワラ)。
細田成嗣さんが ele-king で「Code Girl」のレビューに書いていたように、メアリーのリーダー作(や共同リーダー作)では『声とギターが主従関係を結ばずに対話する』のとは違って、ここには明白に“主従関係”があるわけだけれど、いかにも歌に奉仕しているギターサウンドを基軸としつつ、不意を衝いて精妙に調子っぱずれな彼女のギターの個性は際立っていて、それによって音楽トータルの次元は引き上げられている、というのはやっぱり凄い才能であるよなあ。