あうとわ~ど・ばうんど

Heisenberg Quintet / Live at Kühlspot

当ブログが偏愛するドイツのギタリスト、Hannes Buder の新作を聴く。
Heisenberg Quintet / Live at Kühlspot
Aut Records, 2018)
Anna Kaluza (as), Nikolai Meinhold (p), Hannes Buder (g), Stephan Bleier (b), Rui Faustino (ds)


いずれもドイツを拠点に活動する演奏家(ドラマーのみポルトガル出身)たちによるクインテット。録音は Hannes と Nikolai Meinhold(今年、KOKOTOB ツアーで来日)、ミックスは Hannes が担当しているので、彼が実質的なリーダーと思われる。グループ名の「Heisenberg」とはドイツの物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクのことであろうか。ハイゼンベルク行列力学不確定性原理を導いて量子力学の確立に大きく寄与し、31歳でノーベル物理学賞を受賞、第二次大戦中はナチスドイツ原爆開発チームの一員となり、アインシュタインに原爆開発は時間の問題と勘違いさせ、米国の暗殺標的となった(ことごとく失敗)ものの、当人は原爆開発は不可能だとみていて(のちに開発は破棄される)、彼にとっては精神的苦痛でしかなく重水炉開発もサボっていた、というなかなか面白い人物なのだが、それはさておき、グループ名は即興の相互作用の不確実性をコンセプトにしている、ということなのだろう。25分、20分、13分の長めの即興の全3曲。派手な必殺技の掛け合いも大きなドラマもなく、坦々と経時的にミニマムな即興のインタラクションが進行していくが、にもかかわらず徐々に引き込まれていく不思議な引力がある。


参考動画
www.youtube.com