あうとわ~ど・ばうんど

Otherworld Ensemble / Live at Malmitalo

レント・ロムスの新作が2月末に2枚出ている。今回は2枚ともに、その内容に虚を衝かれた。まずは「来世アンサンブル」という名の新グループから。


Otherworld Ensemble / Live at Malmitalo
Edgetone Records, 2018)
Heikki Koskinen (co-director, tenor recorder, e-trumpet, fl, piano kantele) Teppo Hauta-aho (b) Rent Romus (music director, as, kantele, fl, bells) Mikko Innanen (as, bs, sopranino saxophone, fl, perc)


2017年5月、ロムスのルーツであるフィンランドヘルシンキにおけるライブ録音で、ロムス以外のメンバーは同国のミュージシャンたち。ミッコ・イナネンが参加しているのが、やはり注目だろうか。という事前情報から、ロムスとイナネンがどんな鍔迫り合いをしているのか、と考えていると肩透かしを食らう。だれも突出したり、抜け駆けしたりはしない。アンサンブル、というか、瞬場における音の重ね合いに力点が置かれている、と感じる。

彼のホームページ情報によれば、この音楽はフィンランドの国民的叙事詩『カレワラ』や北部地方の民謡、アニミズムなどにインスピレーションを受けているとのこと(ということはつまり、2015年の『The Otherworld Cycle』と同根である)。冒頭から印象的な異世界美あふれる楽曲たちが続き、モダン及びブレモダンのジャズの伝統が踏まえられた豊かなアンサンブルに加え、それぞれフィーチャーされる無伴奏ソロにも個の豊かな伎倆が息づいている。聴きながら『New Bottle Old Wine』や『New Wine in Old Bottles』といったアルバムタイトルを思い浮かべたりもするのだが、むろん音楽内容からタイトルを連想しただけであって、中身までが似ているわけでないことは言うまでもない。