あうとわ~ど・ばうんど

中島さち子 - Time, Space, Existence

中島さっちゃんの2枚目のアルバムが、ハイレゾリリースされている。

f:id:joefree:20160611161757j:plain
中島さち子プロジェクト"Space" - Time, Space, Existence
Rejoice VVV, 2016)
中島さち子(p) 外山明(ds) 吉田隆一(sax) 山田あずさ(vib)


販売ページ(上記タイトルをクリック)の作品解説以外には、参加メンバーによるツイートぐらいしか情報がないが、建築家・岡田哲史氏の建築作品にインスパイアされたアルバムとのこと。(ちなみに、どの曲が誰の作曲なのかといったクレジットがないけれど、吉田隆一氏の曲は2曲だそうで、それは曲想とネーミングで分かる気がする)

さっちゃんのピアノに初めて触れたのは、もう12、3年前で、彼女の名をもじったオリジナル曲「Happy Child」に代表されるように、彼女のパーソナリティが反映されたような明るく、ウキウキ・ワクワク・ドキドキするようなプレイにとても惹きつけられたのだった(そういえば当時、彼女とセッションをしたこともあったっけ)。古代ギリシアの誰かの言葉で「世界は遊ぶ子供である」というのがあったと記憶するが(勘違いかもしれない)、彼女のピアノを聴いていると「音楽は遊ぶ子供である」と言いたくなる。

彼女は近年「東大卒の数学者で、日本人女性唯一の国際数学オリンピック金メダリストにして、ジャズピアニスト」として有名になっているが、彼女のアドリブの方法論に複雑な数理モデルが存在しているわけでないし(いやもしかするとあるかもしれないが)、そういった形容とは切り離して、単に「ジャズピアニスト」として評価してあげてほしい。(なお余談だが、日本が初参加した90年の数学五輪の日本予選は私が高校1年の時で、数学が得意科目だった私は校内選抜だったか北海道予選だったかに参加してみたけれど、全く歯が立たず、のちに文系に進む遠因になったように思う。ちなみに1年上の先輩が日本代表になり、メダルを取った)

アルバムはそうした彼女の個性が生かされた曲のほか、吉田隆一さん独特のオリジナル曲、あるいは「ふるさと」や「赤とんぼ」などの童謡メロディーがライトモティーフのように効果的に配され、「和」を基調としてノスタルジックだけれど、けっして過去遡行的ではない、未来に開かれた音楽になっていると思う。そういえば気がつけば、彼女のライブにはもう10年近く接していないので、スケールアップしたに違いない彼女の生のピアノプレイをまた体験してみたいと願っている。


中島さち子さんに関する過去記事一覧(旧ブログ)