あうとわ~ど・ばうんど

東京ダルマガエル

東京ダルマガエル/一噌幸弘」(91年、全7曲54分)。このアルバムも昔、心底ハマッたなあ。かつては「It's So Isso」という副題が付いてキング(当時は和楽とジャズのコラボものをいっぱい出してた)から発売されていたが、今は副題が取れてビクター伝統文化振興財団というところから出ている。一噌幸弘(能管,篠笛)鬼怒無月(g)植村昌弘(per)吉谷潔(〆太鼓)+山下洋輔(p)坂田明(as)渡辺香津美(g)仙波清彦(per)。
確か92年頃、一噌のインタビューがジャズ批評に載っていて、ゲスト陣に興味があって購入したのだと思う。聴いて、一噌の超絶技巧に打ちのめされた。そもそも平均律で構成された音楽を演奏するようには出来ていない日本の笛で、こんな複雑で過激なことが出来るなんて本当に驚きだった。また、今考えると、この時の一噌グループはすごいメンバーだ。鬼怒も植村も当時はほぼ無名、たぶんキャリア初期の貴重な録音のはずだ。
①「とひょひょ」。レギュラーグループに渡辺香津美仙波清彦が加わる。ゆったりした日本的テーマ提示の後、テンポアップ。渡辺のややスパニッシュ風味なギターソロを経て、一噌の篠笛へ。テーマメロディーの変奏的ソロから5分20秒過ぎ、怒涛のインプロに突入。バンド全体が猛然とスウィングし始める。うーん、痺れる。後半は鬼怒(右)と渡辺(左)の掛け合い。これって、今では夢の組み合わせでは?
②「美病ん」。ゲストは山下洋輔と仙波。テンポが自在に揺れる7拍子のテーマ、全員によるフリー・インプロを経て出る山下のソロが素晴らしい。余談だが、昔、小樽のO氏夫妻らとキャンプに行ったとき、このCDをダビングしたテープを、車の中でかけさせてもらった。外は雨が降っていたのに、この曲が終わった瞬間雨がやみ、雲間から日が差した。妙に印象的で記憶に残っている。
③「たんぼのかかしと赤トンボ」④「メダカの学校むかし話」⑥「いなか村」は、レギュラーグループによる演奏。タイトルからイメージされる通りの曲が演奏される。あー自分も結局は日本人なのだなー、と、しみじみ聴き入ってしまう。鬼怒のギターも素晴らしい。とてもCoilや是巨人で弾いている人と同一人物とは思えない(笑)
⑤「いいか幻想曲」。ゲストは仙波。唯一即興のない、キメだけで構成される曲なのだが、このキメがとっても複雑で音楽的緊張感に溢れている。いいかげんでも、幻想的でもない。⑦「速流笛破(人生つらいよ)」。ゲストに坂田明と仙波。リズムは8と12のポリ(だと思います、自信ありませんが)。坂田が暴れ、鬼怒もディストーションをかけ、ロック乗り。でも音楽は和風。面白い。名盤です。