あうとわ~ど・ばうんど

新垣隆 & 吉田隆一 N/Y

ここ数日来、ずっと聴いている。


N/Y

N/Y

新垣隆(p) 吉田隆一(bs)


隆隆コンビによる、待望のアルバム。非常に良い作品だと思う。

新垣さんのピアノは端整で、特にジャズ寄りにしようとか、音楽を美しくしようとか、そういった意図は感じられない。至って、自然体の演奏とみえ、しかしそれが美を引き寄せる。坂口安吾に倣って言えば、必要やむべからざる音たちが、それ自身に似るほかには何物にも似ていない美を生み、しかもそれが私の胸に食い入り、すぐ郷愁へと導いていく力がある。ということになる。

対して、吉田さんのバリトンサックスも、非常にまろやかな音で迫ってくる。菊地成孔さんをして「変な音を出させたら日本一」と言わしめた技術はつまり、「音のコントロールに傑出している」という意味でもある。「変な音」ももちろんあるが、トータルで印象に残るのは優雅に包み込むような優しさのほうだ(録音の加減もあるのだろうか)。

この二つが衝突するではない、しかし単に融和するだけでもない。重なり合って、ただただ、音楽を生成している。それは、懐かしいような、新しいような、興奮させるような、情緒に浸らせるような、いろいろな感情を想起させる、不思議なムードに満ちている。さらにいえば、これは、優れてジャズ的な快楽でもあるだろう。


参考(メイキング)