あうとわ~ど・ばうんど

だいだらぼっち / 螺旋階段の日常

酒井俊さんのライブに初めて接したのは(でも、実はその一度しかないのだが)93、4年ごろのことと思う。はっきりいって、ヴォーカルライブにはまったく興味はなかった(今もほとんどない)が、共演が林栄一さん(他は吉沢朔(吉澤はじめ)、米木康志、セシル・モンロー、敬称略)と聞いて、出かけて行ったのだ。しかしライブ終了後には、そのパワフルかつ情動的ヴォーカルに打ちのめされていた。
その後、NHKFMの「セッション」に同じメンバーで出演したときにはエアチェックして、そのカセットテープは何度も聴いたものだった。
そしてCDも買ったのだが、聴いてみるとなんか違う。ライブ盤でなかったせいだろうか、林さんが入っていなかったせいだろうか、求めた興奮が得られず、そうこうしているうちにやがて忘れてしまった。
10数年がたった今春。リリース情報を見たとき、これがかつて求めていたCDではないのか、と予感がした。


螺旋階段な日常

螺旋階段な日常

酒井俊(vo) 林栄一(as) 田中信正(p)


予感は冒頭から当たった。林さんの名曲「回想」に酒井さんが歌詞を付けたもので、ぐいぐい胸に迫ってくる。他にも「ナーダム」、スガダイロー氏の「寿限無」、スタンダードやポピュラーナンバー、どれも濃密だ。今はどこに行ったか分からないカセットテープの記憶にすがる必要はなくなったことを喜びたい。



と、書き終えた所で、カセットテープを探してみたら、実は見つかった(「DATE」が消えていた)。聴いてみるとテープが延びていてピッチが気持ち悪いのだが、やっぱり今でもすごくいい演奏だった。



7・23追記
一つ思い出したことがある。
7、8年前、当時、休日をよく一緒に過ごしていたヴォーカル女性に「ヴォーカルのことはよくわからないけど、酒井俊さんがすごかった」という話をしたことがある。のちに彼女は本職の都合で関東に去ったが、その話を覚えていたのだろう、ある日、酒井俊さんのライブを観に行った、というメールが来た。当時酒井俊さんは童謡みたいなものを歌っていた時期だったらしく、彼女の感想はあまりはかばかしいものではなかった。その当時、こんなアルバムがあったらよかったのに!